夢物語。あるいは空想。

Siren

こうなったら面白いのかもしれない

 目が覚めたのは、麗かな春の日差しが辺りを照らす芝生の上だった。学校の隅にあるこの場所でぼーっとしていた私はいつのまにか眠っていたらしい。

 視界がはっきりしてきた。少し遠くに女の子が見える。学年全員の顔なんて覚えているはずがないので分からないが、同級生なのかもしれない。

 後ろに人が見える。沢山の人が。目を凝らすと、人が動き始めた。赤ちゃんが2人の大人に囲まれて笑っている。何か言っているのかもしれない。一瞬で場面が切り替わっていく。小さな制服を身に纏いはにかむように笑う。大きなランドセルを背に友達と笑い合う。小さくなったランドセルを背負い教室を出て行く。まだしっくりきていない制服を翻しながら走っていく。

 流れるように、しかし断片的な映像が流れる。


 気づいた時には最初の景色だった。少し遠くに女の子が見える。音も匂いも何も感じなかった。でも、慈しむ声が、桜の匂いが、笑い声が、ドアの閉まる音が、ローファーの靴音が聞こえたような気がしたのだ。

音のない映画、一本の映画を長い時間、いや一瞬なのかもしれない。そんなものを見ていたような気がする。これは彼女の今までなのかもしれない。

突然のことに驚いたが、そんな世界も面白いかもしれない。そう思った。









そんな夢を見たのだ。



           

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