23 研究棟

 「ついたぞ。」


 車が止まったのは大きな建物のそばだった。白衣の人間が出入りしていることから,おそらく研究施設なのだろう。

 アンはまだ少女のことを気にしているのか,少し俯いたままだ。


 「確か,リュカというやつが応答したはずだ。1番奥の研究室だと聞いている。」


 「じゃあ,行きましょう。上官。」


 上官の後ろをついていく。俺らの後ろにはレイラーと運転席に座っていたジェイがついてくる。

 白衣を着た人間はこちらを見るもののすぐに目を逸らし,早足で通り過ぎていく。


 「かなり奥だな。」

 

 15分ほど歩いた場所にあった研究施設の1番奥。その扉を開けると,中は机と少しの椅子しかない簡素な空間に1人の青年が座っていた。


 「君がリュカで間違いないか?」


 「はい,僕がリュカです。ようこそ,博士の研究室へ。」


  そう笑顔を見せた。


 「博士は君ではないのか?」


 レイラーが質問を投げかけたが,リュカは答えずに,

 

 「早く入ってください。コーヒー淹れますね。」


 と,立ち上がった。


 椅子は人数分なかったので,上官と俺とアンが座っている。席はいらないと言ったのだが,座れと言われたので座ることにした。


 「わざわざ奥までありがとうございます。

結構な距離だったでしょう?」


 そう話す青年は到底人形を殺す薬を開発したとは思えない軽さだった。


 「博士はですね。つい先日消えました。」

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