22 外

 あのあと,ほとんどのことを話した俺たちは今車の中にいた。軍用トラックの荷台ではなく,大型車の後部座席だ。もちろん手に枷はついているものの,鍵は隣に座る男。確かジェイが持っている,新しく付けられたものだ。しかも,車に乗る前には今運転席にいるレイラーは袋を投げてきた。いわく,「服がぼろぼろすぎるので着替えろ」ということらしい。久々に服を着替えることにもなった。初めて座るクッションのついた車の椅子にアンは驚いていたようだったが,今では外の様子を真剣に眺めている。

 

 戦場とは違う半壊した建物や軍服や白衣以外の服を着た人間。あの場所では,ほとんどが写真の中のものだったものがそこには広がっていた。


 「あと半分くらいだ。退屈だろうが,大人しく座っておいてくれ。」


 前の座席から声をかけてきたのは,地下室へと乗り込んできた敵国の上官だ。


 「そんなに外の様子が気になるのか?どこもこんな感じだろう?」


 「見たことあるのは,戦場と研究室,地下室だけです。他の場所に出たことはありません。」

 

 目も合わせずにそう答えれば,そうか。とまた車内は無言の空間へと戻った。




 「あっ。」


 そこからしばらく走った頃。アンが声を上げた。視線の先にいたのは,今にも死んでしまいそうな少女だった。もしかしたらもうすでに死んでいるのかもしれない。たった1人で石に寄りかかった少女の目は何も映していないように思えた。

 

 「どうかしたのか。」


 少女が見えたのはほんの短い時間だった。


 「いいえ。何もありません。」


 アンはまだ外を見つめながらそう答えた。

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