21 軍人2

 「なぜお前たちはここにいる?」


 目の色が変わった。

 この目は敵に向けられる目だ。


 「『失敗作』ですから。」


 久しぶりに発した声はあの日と何も変わっていなかった。


 「失敗作だと?お前たちは身体上は何も問題ないように見えるが。」


 「私たちは『失敗作』。持つはずのないものを持ったイレギュラー。」


 そうだ。


 「その軍服を着た人間はどんな状況であろうとも殺すために動かなければならない。」


 今までの俺たちの行動のほとんど全てが『イレギュラー』。


 「でもその行動を起こしていない。と?」


 「はい。」


 「そうか。レイラー,隊長に報告してこい。『あの扉の奥には失敗作を名乗る人形がいた。こちらに危害を与えるものを所持しておらず,本当に人形かどうか研究機関の方へ持っていく』とな。』


 レイラーと呼ばれた軍人は訝しげな表情を見せた。


 「上官。人形ならばここで殺しておくべきではないのですか?」


 上官は首を振り答える。


 「俺たちだけではこいつらが本当に人形かどうか判別できない。あと,こいつらは生き証人だ。『人形』を開発し,使用していたことのな。」


 「了解しました。」


 その軍人はまだ納得できてないようだったが,命令に従い上へと戻っていった。


 「ジェイ,メモ持ってるか?」


 扉付近にいた軍人がメモを取り出し,大丈夫ですと声を上げた。


 「じゃあ,この枷を切る道具が来るまでこれまでのことを話そうか?」


 



 

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