20 軍人

 「人間か?」


 一番前にいた敵国の軍人は俺たちを見て1番に口を開いた。


 「それにしてはおかしくないですか。ここまで来るのに1ヶ月弱はありましたよ。人間は生きていられないのではないですか?」


 そんな言葉は俺の耳には上手く入ってこなかった。ここは国の首都にあったはずだ。しかし,敵国の軍人が敵国の軍服を着て複数人で堂々と立っている。それが意味することはたった1つ。


 この国は戦争に負けた。


 「では,人形か。」


 その声にはっとする。この国が勝てていたのは人形が大きな戦力となっていたからだ。負けたと言うことは人形を無力化,または完全に停止させる方法を敵国が手に入れたということを指す。


 1番前の軍人は俺たちに近づきしゃがみ込んだ。


 「俺たちが見えているな。」


 俺はその軍人と目を合わすことで答える。


 「お前たちは人形で間違いないか。」


 ただ,真っ直ぐに見つめ返した。


 「上官,こちらも足に枷がついています。どうしましょう。」


 アンの方にいた軍人は枷を軽く持ち上げ声をあげる。目の前の軍人は上官らしい。アンはこちらをじっと見ていた。


 「保護する。上に行ってこれを切るものを持ってこい。」


 「了解。」


 カツカツとまた石がなる。

 1人が上に向かうと俺とアンどちらも見える位置に立った。


 「なぜお前たちはここにいる?」


 

 

 


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