13 星

 今日も雨は降っていた。少しずつ大きくなっている水溜りからはもう溢れそうだ。


「アン。」


なんとなく目の前に向かって呼んでみた。


「なに。」


 闇に慣れた目はうっすらとアンの姿を映すようになっていた。端的に返ってきた返事は今映るものが,幻では無いと信じるのに十分だ。


 「やまないな。」


 呼んでみたからには少し話を続けようと言葉を発する。


 「うん。これじゃあ星が見えない。」


 「星? 星を見てたのか? 」


 思っていなかった返事が帰ってきたために,少し反応してしてしまった。


 「そう,星。あそこには何もなかったから,星がよく見えた。兵士たちは,あれがどうとかなにかいっていたけどわたしは知らない。エルは知ってる?」


 向こうからもうっすらとしか見えていないだろうが,小さく首を振り,知らないと答える。

 あそこというのは戦場のことだろう。開発されてすぐに戦地に送られる人形は,そこしか知ることが出来ない。


 雨は少しずつ弱くなっている。


「もうそろそろ止むと思う。」


 空気が少し緩む。


 「ここではあまりみれない。窓が小さいから。」


 「そうか。」


 会話はそれ以上続かなかった。

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