18 絶対だから

 戦場の冬は厳しい。寒さは人間の行動を鈍くし,雪は視界を閉ざす。氷は凶器となり,使用する燃料も増える。

 

 ここの冬はただ寒いだけだ。歩くこともなければ,見るものもない。人もおらず,ただ寒いだけ。


 何度も何度も繰り返しているのだろうが,もうわからない。


 “人の言うとこは絶対だからね”


 アンの言葉がずっと自分に付き纏っている。


 この言葉はあまりにも盲信的だ。どんな人であろうともそれが“人間”で有れば俺たちは従う。その言葉がデタラメだろうと無茶苦茶であろうとも変わらない。この部屋で存在し続けるのは,自分がどんなに“罪人”であると思っていたとしても,あの日『ここにいろ』と言われたからで,『死ね』とは言われなかったからだ。


 だからこそ,『またね』の約束には答えられない。




 初めて自分が『失敗作』なんだと感じた。

 “人”から,“人間”から投げかけられた言葉を,約束を,命令だと受け取っていない自分に気づいてしまったのだ。


 無理だと思った。

 それこそが失敗作である証明だ。


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