5 理由

 「こんにちは,2人とも。」


 今日は看守がやってきた。

 いつも新聞だけを持ってこの地下室にやってくる。


 「なあ,看守。なんでここに来ることになったんだ?」


 ここにくる看守はいつも戦場には行けないような年齢のやつだった。

 でもこの看守はまだまだ第一線で戦ってもおかしくない程に若く見える。


 「そういや,名前教えてなかったね。僕の名前はスペクトだ。スペクトと呼んでくれ。」


 新聞に目を落としたまま答える。


 「何故ここに来るのか?だっけ。上からの命令だよ。」


 「看守,いやスペクトはまだ戦場にいてもおかしくない年だろ?なんでここに来るんだ?」


 その言葉に,彼は目線を上げる。


 「よく実年齢より上に見られるのに,よく分かったね。そうさ,何もなければ戦場にいた。」


 目が合った。


 「ここにいると,暇だよね。何もすることがない。せっかくだから話をしよう。」


 「僕の過去の話だ。」


 そう言って彼は微笑んだ。








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