第8話 曲解のファランクス
何事も無く3日後のとても寒い朝、氷柱に反射した太陽光で目を覚ました。
「アスティミア様、絨毯ですお納めください」
「いいの?こんなにいい物を」
朝から先に起きていつもより生き生きとしている、アスティミアのあれほどに元気な姿はみたことはない。
「マサオミ様もこちらに?」
「どうしたの?」
ボロ小屋の外で男女の声が聞こえてくる、1つはアスティミアでもう1つは以前の厳つい男だろう。
「タマゴサンドイッチというものをご教示いただきたく罷り越した次第です」
「昨日の?」
やけに遜ってアスティミアに話しかけている。
昨日はタマゴサンドイッチを2人でたくさん作って、アイトリア正教の孤児院に持って行き大勢の人と食卓を囲んだ。アスティミアが育てた人々も世代を超えて多くいた。
「いいよ、じゃあここで今からやろう!」
「恐縮です」
「マサオミも手伝ってよ~」
台所から元気な声でお呼び出しを受けた。
「マサオミ様、お手数をおかけします」
妙に遜る。
そこへ3人組のもう1人が走って来て扉を開けて小屋に入るとそのまま疲れたようにヘッドスライディングして止まった。
「大丈夫?痛くない?」
「オクタウィウスが何者かに」
心配する声に俯いたまま悲しそうに淡々と喋っている。
「案内しろ」
厳つい男は手を洗うと荷物をまとめた。
「こちらからお願いした事で申し訳ないですが、所用で少しだけ出てきます」
「わかった行こ、”家族”だから」
3人にとりあえずついて行った。
5kmくらい走って市場の北東の部屋に着いた。
既に異様な雰囲気が漂い生臭い鉄の臭いが部屋に充填されて、あちらこちらに暗赤色の飛沫痕があった。血溜まりを避けながら部屋の奥に入ると男は妻子を覆うように家族共々無残に変わり果てていた。
「くっぅ、酷い」
「せめて最期くらいは穏やかに迎えて欲しかった、毎日虐げられていて、、、だから私にもオクタウィウスの見送りをさせて」
身内はすでに居ない。
「安らかに」
解くように体を伸ばし、遺体を洗い、目を閉じ、顔を覆い、服を変え、少しの硬貨と小麦のケーキを口に入れ、東の方角を頭にして3人を安置した。
「赦せぬ」
厳つい男は短剣のポンネルを握りしめて片膝をついて遺体の前に座った。
「ここか!」
「動くな!」
盾と槍を持つ戦士に瞬く間に囲まれた。
「違うの」
反論するたびに徐々に近づいてくる。
「黙れ悪魔!」
さらに近づいてきて手を伸ばすと触れそうなところに迫っていた。
「かかれ!」
隊長らしき男の合図で4人は盾で殴られた。
抵抗することはできない、してはならない、この国では逮捕抵抗は重罪となる、それを知っているかのように盾で殴られて気絶し、呆気なく縛られて捕まった。
アイトリアーフォス~膝枕から始まる古代系ダークファンタジー WTF @Morishita1129
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