第2話 暖かいスープ
しばらくしてアスティミアは料理を始めた。
エルフの作る料理、きっと美味しいものに違いない、期待していたが、数分後、運ばれて来たのは皿に僅かに盛られた料理と具の少ないスープ、匂いはあまりしない。
「毒など入れてません」
安心させようと必死だった。
「私は生粋のエルフです、山姥のようにマサオミを食べたりはしません」
見るからにエルフだが、想像とかけ離れた生活をしている。
ファンタジー物なら派手な装飾や純白のキトンだろう、だがこのエルフは違う、補修された継ぎ接ぎの薄汚れのキトンだった。
「冷めないうちに食べて」
恐る恐る口にすると、、、上手い、言葉では表現できない美味しさだった。
「ほら美味しいでしょ?」
笑顔で聞いてくるアスティミア
返した言葉は「美味しい」
ただそれだけを言って完食してしまった。
「アスティミアさんは食べないのですか?」
お腹は空いていないらしいが、数分後、アスティミアがグゥ~と鳴った。
「つくりますよ?」
仕事と自炊に明け暮れ、おかげで家庭的だが、独身、作るとは言ったがガスコンロなど存在しない世界、薪での火力調整の経験が無かった。
わからないこともある、でもお腹を空かせた女性を差し置いて自分だけ腹を満たした罪悪感により、そのまま台所に立った。
「食べ物はどこにありますか?」
台所を一通り見渡しても食べ物が一つも置いてない。
「上です、上の棚に置いてあります」
梯子を登り、棚の上を見ると乾燥したトウモロコシと僅かに残った琥珀色の液体、少しの調味料があった。
「私の事は気にしなくてもいいです」
遠慮しているのか、拒絶しているのかわからない。
それでもいい、自分にそう言い聞かせながら暖かいコーンポタージュを作った。
「私の好きな料理を何故?」
驚いた様子の2人、偶然にもアスティミアと同じ好物だった。
「俺もコンポタ好きです」
そしてアスティミアはゆっくりと口に運んだ。
何日も食べていなかったらしい、あっという間に完食して、そしてアスティミアはそのまま、藁の上で寝てしまった。
相当疲れていたのだろう、あっという間に深い眠りについた。
それから皿を洗い、薪を集めに真冬の外に出て行った。小屋に戻るとアスティミアは膝を抱えて起きていた。
集めてきた薪は暖炉の横に置いた。
「マサオミはあてがあるの?無いならずっと居ていいよ」アスティミアからの言葉、偶然会った人に寝床と食事を提供してくれた優しいエルフ。
そして夜になった。
2人は並んで横になった、でも恥ずかしそうに互いに背を向けた。
「寒くない?」
寒そうなアスティミアのキトン、それでも心配してくれる
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