第8話 急展開に付いて行けない!
お姉さまは僕の方に向き直り、
「ゴメンただの言葉遊び、何の心配もいらないから」
「でもたいっちゃん真剣だったけど」
「合わせないと面倒なの、何十分も居座わられたらたまんない」
「面倒くさい人なの?」
「超が付くほどね」
「なるほど、、、」
お姉さまは背筋を伸ばして座り直し、
「マスク」と一言、ちょっと不機嫌そう。
投げ出していたリュックから裁縫セットと用意していたハンカチを取り出す。
ハンカチを渡そうとするとその手を両手で包まれた。
「私がこの家を出て誓と暮らしたいと言ったのは嘘じゃないから、っていきなり何言ってんだろ、あーリセットリセット全部忘れて、忘れた?」
「忘れ、、、ない」
「、、、お手本見せて」
ちょっと機嫌が良くなった様な。
針に糸を通す。
「なんでそんなに簡単に通るの」
「慣れたら通るから」
「はい先生」
30秒ほどで片側を縫い終わる。
「糸抜かないで参考にするから、ミシン使ってみる?」
テーブルの横に有名なメーカーのミシンの箱が置いてある。
「うん、結構高そうなミシン」
「まあそうでしょ見栄だけ人間だから母は」
「えっ一緒に住んでるの?」
「ああ育ての母って言ったからね、住んでいるけど何処にいるやら、海外かもしれないし部屋に籠ってるのかも、姿見ないほうがせいせいするわ」
「僕には分からないけど話もしないの」
「しない、もういい考えたくない、母はみきちゃんでいいの」
「う、うん分かった」
そう言ったら、怒ったように、
「わかんないで! 、、、ごめん」
なるほどお姉さまの闇はここなんだ、母親は家のこともお姉さまの事も放ったらかしで自分のことばかりなのかな。
「えっとお姉ちゃん、じゃなくてたいっちゃんでもなくて美和ちゃん、ぼ、僕で良かったら傍にいる、いや居たい」
「み美和でいいよ、ありがと、居なくなったら許さないから」
言い方はきついけど目が怒ってない、可愛くって。
「えとミシン開けていい?」
「どうぞ、一回も開けてないかも」
「えっどうして?」
「ほんの気まぐれ、やってみようかなって多分通販で買ってそのうちって何年も過ぎ去って、ミシンの事も忘れている、ハズ」
「なるほど(お母さんの事)話題にしないほうがいいね」
「そうボロしか出ない」
箱を開くと明らかに新品です、の状態で収まっている。
「わっゴールドのミシンなんて初めて、でもややこしそう、ボタンがいっぱい」
「、、、使ってみて私には変な形の仏像にしか見えない」
「これが仏像、ぶつぞ、う」
「ぶって」
そう言って頬を膨らませてこっちを向く美和ちゃん可愛すぎる。
(あーほっぺにキスしたい)
右手指先で爪が当たらない様にほっぺをプッシュ。
「プッ」
飛沫が顔まで飛んできた、美和ちゃんなら嫌じゃない。
「誓いが洒落を言うとわ思わなかった、ごめん唾掛かった?」
こっちに身を乗り出して顔が目の前。
(ムリ)
思わず抱きしめてしまった。
ビクッと硬直するのが分かった。
(全然慣れてない感じ)
「ごめん、可愛すぎて思わず、、、」
「い、いいよこんな事くらいおおお安い御用よ」
動揺まるわかりの返事。
ゆっくり腕を離すと下を向いたままテーブルの上のティッシュを抜いて僕の反対を向く、そして目の辺りを押さえる。
(泣かせちゃった?)
「み、美和、、、ちゃん」
「美和でいい、目にゴミが入ったの、い、意外とエッチね」
「え、エッチ? かな、どっちにしろ抱きしめたくなって我慢できなかった」
「良いの、ちょっとびっくりしたけど嬉しい、愛されちゃったテヘ」
そう言ってティッシュをもう一枚取り、
「スッ」鼻をすすりながら嗚咽を漏らし始めた、
「うっ、、、うっ、、、」
何もできない僕。
少し経って、
「誓ー」僕の肩に額を付けた。
しばらく動かずそのままにしていると、
「バーカ、取り乱しちゃった、責任取って嫁にしなさい」
「いいの? 底辺の生活になるけど」
「だめ耐えられない、お嬢様を何だと思ってるの、におわないトイレ、足を延ばせる浴槽、20畳の快適なリビング、お手伝いさんはいらないけどそれが最低限、学費は出してあげるから、やりたいことやって、私を食べさせる心配の必要はないから誓を支えさせてそれが私の愛情」
「えっそれって、、、」
「甘えるんじゃないのよ学校出て5年で目が出なかったら離縁、子供を連れて家に戻る、別れなくてもいいか目が出るまで別居、さあお仕事に励みなさい」
そうは言うものの両手で僕の両手を握って離してくれなかった。
「この手は離さないから私が死ぬまで離さない、エルメキア・ラーーンスよし、誓は疫病神に呪いを掛けられました、一生憑り付くから覚悟も何もないよ、あきらめなさい」
「エルメキア、、、(ドラゴン
(確かにリナインバース的に目立ちたがりの破壊神ミワインバース)
「あー先に会っておくんだった、友達の関係で気安く、緊張しちゃいそう」
「竜破斬(ドラグ・スレイブ)発動しないでよ、住むところなくなる」
「知ってるの!誓を困らせる奴らはドラグスレイブで撃破してあげる」
「街ごと消さないでよ」
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