第9話 たいっちゃんの作戦

 黄金(色)のミシン。なんだかなあ。

 でもスイスイ縫えるから10倍のペース。


「これなら楽々毎日来ていい?」

「いいけど、、、泊っていくとか?」

「あーごめんお母さん心配させたくない、うちはたいっちゃんが泊まれるような家じゃないし」

「毎日来たらいいじゃない」

「うんそうする、それで今からうちに来ない?」

「行くよもちろん、何着ていこう、ブレザースーツ?」

「そんなにかしこまったら余計ガチガチにならない、それにいきなり嫁になりますはないよ、友達って言うけどベタベタでいいと思うけど」

「ベタベタね、すりすりね、アッハン、、、」

「だめ、可愛く」

「う、うん可愛く、、、け化粧しよっと」


 テーブルの方へ移ってお化粧を始める。

「軽くでいいからね」

「化けたい」

「化けなくていいの素顔でも可愛いから、いや素顔の方が可愛いのたいっちゃんは」

「惚れたな」

「惚れた!まじ」


 力を入れて言うとたいっちゃんがフリーズ、固まった。


「あー心臓止まるかと思った、いきなり本気だもん、って言うか私も、、、だから」

 聞こえなかったけど十分気持ちが伝わってきた。


「学校のジャージでいい?」

「うん、ベストだと思うあまり派手なのより」

「うんちゃらちゃらしたのは次回から」

「いきなり」

「地も見せておかなきゃ、おめでた女だもの」

「七月七日と代わったんだけど」

「そうだったロマンチーック! 美和ちゃん」


(ドラゴンスレイブ発動しそうな勢い)

「リナちゃんに聞こえた」

「まかせなさい悪党どもは木っ端みじんにしてくれるわ!」

「お母さんに会うんじゃなかった?」

「誓が乗せるからじゃない、『美和です、うふ』これでいい?」

「よくない、『太知たいち美和です』さらっと」

「分かってる、ラグナ・ブレード!」

「分かってない」



 たいっちゃんはここの駅まで自転車で、だけどドピンクの自転車を押してるのは僕。


「暑っつー死ぬう」

「コンビニ行く?」

「行くけど、誓ピンク似合う」

「うれしくない、たいっちゃんは白が似合うと思う、僕の好みだけど」

「おっおう、白雪姫をやらせたら日本一よ、雪女で悩殺とどっちがいい?」

「ブラウスでいいけど」

「やだえっち」

「は?どこが」


 顔を赤くして

「んっ、いいの、根がスケベなのを忘れないように」

「忘れたくても忘れさせてくれない」

「反省」

 どこかで見たお猿のポーズで。



「アイスアイス、、、愛すう」

 コンビニでアイスを選んでる美和ちゃん、こっちを向いて顔を赤くする。

「あ、あまり高いのにしないで夕食のおかずが買えなくなる」

「夕飯?もちろん私の分も?」

「う、うんだけど犬の餌って思われるかも」

「うーん、口に合わないってか餌喰わせるな、善処しましょ」

「えっ?」

「うふっ、買い物へ行ってから」

「う、うん」


 僕の地元の駅で電車を降りて家までの途中にある小さなスーパーに寄る。


「キャベツが安い、野菜炒め決定」

「早っや!お肉は?」

「豚の切り身、最安の」

「ちょ、やだ脂身ばっかり、カンパするからこっちにして」


 たいっちゃんが手に取ったのは値段が三倍以上。

「でもお客さんなのに、、、」

「お客さんはこっちが良いの、それとも誓はピッチピチを通り過ぎたブクブクの3Dおっぱいがお好み?えっちー」


 お店に居る人に聞こえる声で言わないで欲しい、でもそこを指摘するとさらに大変なことに成りそうだから、

「わ、分かったから、仰せの通りに」


 結局彼女が籠をもってあれこれ放り込んで精算までしてしまった。

 とても僕が払えない金額を。


 僕がなんて言ったらいいか悩んでいると、

「私の欲しいものを買ったんだから私が払って当然なの、キャベツの分だけの感謝は帰りに駅まで送ることでチャラよ」


 (お言葉に甘えます、他に選択肢がない)


 家に帰って夕飯の準備、しっかり手洗い。

「誓が作るんだ私も手伝う、うふっ新婚さんみたい」


 エプロンを渡すと二人きりなのに声をひそめて耳元で、

「裸でエプロンしてあげようか」

 顔を真っ赤にして言わないで欲しい。


「お、お母さん直ぐ帰ってくるから」

 明らかに動揺して。(下の方がやばい)

「え、エッチはまだ駄目だからね」

(誘惑にいつまで耐えられるだろうか)


 たいっちゃんはマスクを外して目を閉じ唇を突き出す。

(もうかんべんしてー)


 人差し指でその唇をちょんと。

 それでも満更じゃない顔で、

「えへっ」


(天使の顔をした悪魔だー)

 僕は竜破斬(ドラグ・スレイブ)ではないけど撃沈した。



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