工場で働きながら病気の母親を看病しているニーナに突然、結婚話が持ち込まれます。相手は自動車事業を営んでいるレクセルで、死んだ彼の祖父がニーナ・ランデルを妻に迎えることを遺産相続の条件にしていたのです。
若き実業家の妻に迎えられるというのは、母親の治療費にお金が必要だったニーナにとって嬉しい話でしたが、そもそもどうしてニーナなのかということをランデルも、そしてニーナ自身も分かりません。ちょっとした謎解きのような展開が想像できて、連載の先が気になって仕方がありません。
ファンタジー世界が舞台ではなく、魔法や異能力も登場しませんが、代わりに自動車産業という舞台となっている時代において最先端の分野をめぐる攻防のようなものが描かれて、スリリングな企業小説としての面白さを感じさせてくれるような気がします。
ニーナがカフェに働きに出るような自立した女性ということは、これからの物語の中で内助などではない活躍を見せてくれるのではと期待させます。そんなニーナを追いかけていきたいと思わせてくれる物語です。
(「運命を自ら最高にする結婚小説」4選/文=タニグチリウイチ)