ルートD

キャラ名変更があります。注意してください。


怒号を浴びせる男性:男性

泣きじゃくる女性:魔女

等の急な変更があります。

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カナ

「私はどうすればいいの…どうしたらいいのかわからないよ…」


少年

(わかった…カナ、君に行ってほしいところがあるんだ」


カナ

「それはどこなの」


少年

(僕の居た世界…目を逸らした元の居場所……)


カナ

「もしかして、貴方も私と同じ?」


少年

(お姉さんを頼んだよ…)


語り

気づくとどこかの街の中にいた。

先ほどの街の場所とは違いどこかの民家の前のようである。


カナ

「ここはどこ?さっきの街とは場所が違うけれど」


語り

目の前の民家から何やら声がする。

中を覗くために窓に手をつくとまたいつの間にか家の中にいるのであった。


カナ

「え、ここって誰の家なの?」


語り

カナが振り返るとそこには怒号を浴びせる男性と

地に伏し子供を隠すようにして泣きじゃくる女性がいた。

不思議と二人の顔は認識することができない。



カナ

「これって?」


泣きじゃくる女

「ごめんなさい…ごめんなさい」


怒号を浴びせる男性

「そのガキは化け物の子だと街中に広まってしまったではないか!

このままだと俺の評判もあがったもんじゃねぇ!

そのガキを殺してやるから渡せって言ってんだよ!」


泣きじゃくる女

「なにをいってるの!!この子は・・・・ヨツバは貴方と私の子供よ!」


怒号を浴びせる男性

「うるせぇ!そんなガキなんぞ俺の子じゃねぇ!」


カナ

「もしかして・・・あの子って」


語り

その子供はシオンと同じく白い髪に白い肌、そして真っ赤な瞳の子供であった。


男性

「そう・・・こいつはヨツバ。その容姿を恐れられ忌み子として

世間から弾かれ奴隷として扱われた少年さ

顔が見えないだろう?

それはヨツバの記憶に二人の顔が映っていないからさ」


カナ

「貴方ッ!」


語り

隣にはあの憎らしい男性が立っていた。

しかしその男性の表情は今までのようなニヤニヤとした表情ではなく

寂しげであり同情の眼差しを少年に向けていた。


カナ

「貴方何者なの?この世界の事を知ってるんでしょ!」


男性

「・・・あぁ知ってるよ。

この世界は僕の作った物語の中。

正確にはそのイメージの集合体。読者と筆者の境界線。」


カナ

「筆者?貴方がこの本の作者ってこと?」


男性

「そうだね。」


カナ

「貴方は何でこんな物語を?」


男性

「別に共感してほしかったわけじゃないんだ。

ただ僕がいればよかったんだよ。でもそこに僕はいなかった。

世間に僕の文章は届かなかったんだ

それは僕がいないも同じだよ」


カナ

「どういうこと?わからないわ!」


男性

「この少年は僕の境遇そのものさ。

他人への承認欲求も不完全なまま人の輪の中を漂っていて

それが理解されず、

否定され、輪から外れ

そして人とは違うと称され

誰とも馴染めずに

ただひたすらにその憂さ晴らしを文章にした結果

そんな憂いの言葉も評価されず

自暴自棄になっている駄目人間

それが僕。」


カナ

「虐められてたってこと?」


男性

「そうかもね

暴言は吐かれ暴力は振るわれて

でも、それは君も同じだろう?

いや同じだからこそ

見ている世界が同じだからこそ

この世界に君がいるんだよ。」


カナ

「同じ?」


男性

「君も僕と同じだろ?

君は他と少し違う考えを持っていて

それを知っているがゆえに避けてしまい

それが悪い方向へ転んでしまった。

そんな君の逃避行がこの世界ってわけなんだろ?」


カナ

「そう…だった……。私は、いじめられてて

それで、本を読むことで逃げて……」


男性

「その少年を僕の捌け口として出したんだけどね…

やっぱり気持ち悪いんだよ…自分の悪いところを見ているみたいでね。

だから消し去りたいんだ」


カナ

「貴方も書くことで逃げていたのね」


男性

「そうさ…だからこんな物語を終わらせたいんだ。」


カナ

「この物語の最期って…魔女が世界を滅ぼして

すべて無くなった世界を見て絶望して自らの命も絶ってしまう…

そんな悲しい終わり方…」


男性

「僕は共感者を求めていただけなのかもしれないね

君みたいな人を」


カナ

「貴方はどうしたかったの?」


男性

「僕はどんな結末でもいいと思ってる

違うな………僕は過程や結果なんて望んでない

ただ在ればいいだけなんだ

在ってほしかったんだ」


カナ

「…」


男性

「じゃあ僕から君に質問していいかい?君はどうしたいの?」


カナ

「私は…………」


男性

「これから先どうするかは君に任せるよ

僕はこの物語を描けなかった。君の色で、君の形で、君の持つイメージで

ここから先を書いてみて」


カナ

「うん…やれるだけやってみる」


男性

「この先でも僕が出てくるだろう…

物語の支配者である僕の心そのものが君を邪魔するだろう

今の僕は残留している迷いそのもの

あっちの僕は他人を怖がっている恐怖そのもの

互いは似て非なるものなんだよ

僕から干渉はできないしそれはあっちの僕も同じなんだ」


カナ

「わかった…私の書く物語を見てて」


男性

「楽しみにしてるよ、カナ」


語り

そうして決意を決めて目を閉じる

再び瞼を開けると魔女の家の前に立っていた。

その家に近づくと扉の前に魔女が倒れていた。


カナ

「魔女さん!!」


魔女

「貴女は…?」


カナ

「わたしは…カナっていいます。魔女さん…大丈夫ですか?」


魔女

「えぇ…一応は…。

それより貴女は逃げなさい…あいつに気づかれる前に…」


カナ

「私もあいつを倒すために協力させてください!」


魔女

「なぜ…?貴女はいったい…?

…貴女はもしかしてずっと?」


カナ

「魔女さんだとあの男を倒せないんですか?」


魔女

「わからない・・・本気を出せば倒せるかもしれないけれど

世界をも壊してしまうかもしれない…それをシオンは望まないはず」


男性

「でもそれじゃ俺は倒せないよ?」


語り

男性が突然カナたちの目の前に現れる。


魔女

「お前だけは…許さない!」


男性

「俺の事をお前お前って呼ばないでよ?俺の名前はノアっていうんだ

そこの君は気づいてるだろうけどこの本の作者だよ。」


カナ

「……」


ノア

「そう。本当にこの展開は何度も見てさぁ。在り来たりでつまらないんだよね。

だからさ…終わりにしようって思ってさ」


魔女

「許さない…!!よくも!!!よくもおおおおお!!!」


ノア

「いいね~魔法合戦か!」


語り

お互いに大きな魔法陣が手から浮かび上がる。

魔女は黒い炎をノアに向けて放つ。

対してノアは紫の風を放ちそれを払う。


魔女

「なぜ!なぜシオンが死なないといけなかったの!!

あの子には何の罪もないのに!!」


ノア

「罪が有る無いは関係ない。

結局は力ある人間の言動が他人を巻き込み

大きな群となり真実を書き換えることもある…

それを決めたのは僕じゃなくて世界なんだよ魔女様?」


魔女

「ならそんな世界ごといっそ!!」


ノア

「そうこなくちゃね」


語り

魔女は今までよりも大きな魔法陣が背中から浮き上がる。

ノアも負けじと大きな魔法を唱える。

魔女は火と水の魔法を両手で同時に繰り出す。

その魔法が当たる直前にノアは笑みを浮かべる。


ノア

「でもそろそろ幕引きだね」


語り

ノアは指を魔女に向けると

そこから紫の雷撃が飛び出し魔女の魔法をかき消し魔女へと向かう。


魔女

「そんな!うわあああああああああああああああ!!!」


ノア

「僕に勝てるわけないだろう?あははは!

じゃあそろそろとどめと行こうかな」


魔女

「ぐっ………」


語り

魔女は地に伏し、腕を押さえながらノアを睨む。

ノアはゆっくりと魔女に近づく。しかし目の前に何者かが立ちはだかった。

それは先ほどまで傍観していたカナであった。


カナ

「ねぇ…ノア」


ノア

「なんだい…?命乞いなんてしたって無駄だよ?」


カナ

「貴方は何を伝えたかったの?」


ノア

「何を伝える?急に何を言ってるんだい?」


カナ

「ううん…貴方はなんて伝えたいの?

この本を読んでいる人に向けて」


ノア

「はあ?知った風な口を聞くねぇ……」


カナ

「わかるわ…貴方と私は似ているから」


ノア

「うるさい…」


カナ

「自分の世界との価値観の違いを考えすぎてしまう…

そのせいで他人との距離感がわからなくなる

私もそうだからわかるわ」


ノア

「お前に何がわかる!ずっと一人で塞ぎ込んだ辛さが!

何を理解できるっていうんだ!

理解なんて求めてないんだよ!!」


カナ

「……」


語り

カナはノアに一歩一歩ゆっくりと近づく。

ノアは顔をぐしゃぐしゃに潰しながら罵声を言い続けている。


ノア

「貴様に何がわかる…!

結局お前もあいつらと同じだ!

目を背けている癖に知ったフリをする!!」


ノア

「ずっとそうだった…誰もわからない誰も知ろうとしない」


ノア

「人間なんてそんなもんだ…他人を愛しても…他人を信じても

それは確実に破られる…苦しむことになる…

人間には愛も情も…何もないんだ……」


ノア

「俺は!!!」


カナ

「…よく頑張ったね」


語り

ノアの目の前に立つとカナはゆっくりとノアを抱きしめる。

ノアは強く振り払おうとするもカナは優しく、それでいて力強く離さない。

次第にノアの抵抗の力が弱くなっていく。


ノア

「………なんで今さらなんだよ」


カナ

「私もそう思ってた

なんで誰もわかってくれないんだろうって

でもそんなときに貴方の本を読んで

辛いことも忘れられた

貴方の世界に共感したの」


ノア

「……」


カナ

「ありがとう」


ノア

「なるほど…ね。

こんな終わり方もいいかもね……

思いつかなかったよ」


語り

ノアの身体が徐々に消えていく。ノアは満足そうな表情で消えていった。


魔女

「終わったの?」


カナ

「魔女さん」


魔女

「きっとずっとこうやって繰り返していたのね

多分これが初めてじゃない」


カナ

「魔女さん…聞いてもいいですか?」


魔女

「なに?」


カナ

「魔女さんはシオンを愛してた?」


魔女

「そんなの当然じゃない…

あの子は…何もなかった私の世界を変えてくれた………

温かい気持ちをくれた…大切な子だった…」


カナ

「そういう温かい気持ちって…素晴らしいと思います

そんな感情をいつか私も持てたらいいな…なんて」


魔女

「何言ってるのよ。貴女は十分強くて優しいわ

いずれわかるわよ。」


カナ

「ありがとうございます」


カナ

「これでいいのかな…ノア」


ノア

(これから先どうするかは君に任せるよ…)


カナ

「ノア…私なりの終わり方を見せるわ

つまらないなんて言わないでね」


魔女

「何を言ってるの?」


カナ

「魔女さん…

シオンを、ヨツバをこれからもずっと愛してあげてください」


魔女

「それってどういうー」


語り

すると辺り一面に真っ白い光が広がる。

それはまだ何も書いていないキャンバスの一枚のようで

そこに思い思いの色が加えられていく。

そして物語は再び刻み始めた。


魔女

「ここは…?」


語り

魔女が目を覚ます。そこにシオンが眠っていた。


魔女

「シオン……?なんで?」


語り

魔女は窓から空を見上げる。星の位置で現在の日時を確認した。

それはシオンが殺された日の翌日の夜であった。


魔女

「シオン…!シオン!!」


シオン


「…どうしたのお姉さん?」


語り

魔女はシオンを抱きしめる。

シオンは困惑の表情をしている。


シオン

「急にどうしたの・・・?」


魔女

「貴方をもう…絶対に離さないから

絶対に…一人になんてしないから……」


シオン

「うん・・・」


語り

シオンもそっと抱きしめ返す。


シオン

「お姉ちゃん…僕も名前で呼んでいい?」


語り

魔女は頷く。シオンは照れくさそうに笑うと真っすぐ魔女を見つめる。


シオン

「シラユキお姉ちゃん愛してるよ」


シラユキ

「私もよ、シオン」


語り

ここで物語は終わった


カナ

(これでどう…?満足いった?ノア)


語り

目を開けると部屋の椅子に座っていた。

パソコンをつけたまま寝ていたようであった。

開いていたのは小説投稿サイトの一つの作品であった。

その作品は何か特徴があるわけではなく評価されている作品ではなかった。

だがその作品の何かがどうにも気に入ったのか最後まで見て寝ていたようだ。

誰に届くわけでもない感想が無意識に口から零れた。




ノア兼役→作者


作者

「いいねこの作品」


ルートD TrueEnd

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失われし愛と奪われた情の魔女 ミクロさん/kagura @micronears

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