ルートA

キャラ名変更があります。注意してください。


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カナ

「魔女さんの家を調べてあいつを倒せるか調べてみる」


少年

(わかった…カナ、お願いお姉ちゃんを助けてあげて…」


カナ

「わかった!」


語り

再び意識が暗転する。

気がつくと魔女の家の中に居た。

そこは以前に来た時と何も変わっている様子はなく、先ほどの街のように損害があるようには見えない。


カナ

「といっても何を調べればいいのか…」


語り

カナが机を見るとそこにはぽつりと手帳が置いてあった。

それはとても異様な存在感を放っていた。

まるでそこだけ世界に色が付いているかのように。


カナ

「あれ…?この手帳どこかで見たような…?」


語り

カナは手帳を手に取るとそれをどこで見たかを思い出す。

初めてシオンと話した家の前でシオンが持っていたものであった。

中を開いてみると中はシオンの日記になっている。

そこにはシオンが魔女に向けた気持ちが綴られていた。

その内容は魔女にされて嬉しかった事や過ごした楽しい日々を感情のままに書き連ねる箇条書きである。

だがその純粋なその想いは伝わってきた。


カナ

「やっぱり魔女さんは悪い人じゃなかった

これを見せれば魔女さんも元に戻るかもしれない

でも後はあいつをどうやって倒すか…」


語り

カナは何かヒントがないか考えるため

この世界に来る前の事を思い出そうとしていた。


カナ

「ここに来る前に…確か本を読んでた…

そうだ…この本って確か、あの男の書いた本だ…

作者と顔が同じだった…

って事はあいつの書いた物語…

でもなんで作者なら思い通りに書かないんだろう?

確か元々見てた物語ではまだ終わらないはず…

なんで終わらせようとしてるんだろう…」


語り

カナはあいつの言っていたことを思い出した。


男性

(もう興味がないんだこの物語にね)


カナ

「そうだ…あいつはこの物語をもう書く気がないんだ

だから物語をすぐに終わらせようとしているんだ

わかったかもしれない…あいつの倒し方!」


語り

そしてカナは決意を決める。

その想いに応えるように目の前が移り変わる

そこは魔女の家の前であった。

今までと異なり辺り一面は焼け野原となり草木や花々は燃え尽きていた。

カナが近づくとその家の残骸前に魔女が倒れているのがわかった。


カナ

「魔女さん!!」


魔女

「…!貴女は…?」


カナ

「わたしはカナっていいます。そんなことより…大丈夫ですか?」


魔女

「えぇ、一応は…。それより貴女は逃げなさい…

あいつに気づかれる前に…」


カナ

「私もそのあいつを倒すために協力させてください!」


魔女

「なぜ…?貴女はいったい…?

…貴女はもしかしてずっと…?」


カナ

「魔女さんはあいつを倒せないんですか?」


魔女

「わからない…本気を出せば倒せるかもしれないけれど

世界をも壊してしまうかもしれない…それをシオンは望まないはず」


男性

「でもそれじゃ俺は倒せないよ?」


語り

男性が突然カナたちの目の前に現れる。


魔女

「くっ!!お前だけは…許さない!」


男性

「俺の事をお前お前って呼ばないでくれないか?

俺の名前はノア

そこの君は気づいてるだろうけどこの本の作者だ」


カナ

「本の作者…!!」


ノア

「そう。本当にこの展開は何度も見てさぁ。在り来たりでつまらないんだよね。

だから終わりにしようって思ってさ」


カナ

「ええ…終わりにしましょう」


ノア

「そうだね…つまらない御託はいい。

決戦描写に移ろうか。長い文章は読者にとっては見づらいだけだからね」


語り

ノアは何かの魔法陣を放つ。魔女は対抗すべく手をかざすも魔法を放てずにいる。


魔女

「貴女だけは逃げなさい…あいつの狙いは私よ…」


カナ

「魔女さん…後は私に任せて」


語り

カナは魔女の前に立ちふさがる。


魔女

「はやく…逃げなさい!」


ノア

「どうする気?君はこの世界ではただの傍観者。君には何もすることはないよ」


カナ

「そうね…最初はそうだったかも。でも貴方はこの物語の作者。

でも書き手なのに気づいていないのね。

物語の価値を決めるのは読み手。

書き手の意思を読み取り、考察し独自の理論を持って読むべきものなのよ。

でも書き手がやる気を失ってるんだったらもうそこに意味はない

そうなったときに価値を見出せる事ができる人は読み手だけなのよ」


語り

カナは手をかざす。するとノアの魔法陣よりももっと大きい魔法陣が出る。


ノア

「なんだ…?どういうことだ?なんでお前が?」


カナ

「貴方がこの物語を最後までやり通す気があったなら終わりだったわね

もっとも貴方がそれで諦めていても負けていたわね

貴方がそれでも書き手として最後まで読者に楽しんでもらいたい

独自の読み方をしてもらいたいって思わなければね」


ノア

「…なるほどね」


語り

カナとノアが同時に魔法を放つ。

お互いの魔法はぶつかり合い、辺りにものすごい衝撃波を放つ。

しかし決着は一瞬だった。

カナの魔法はノアの魔法を打ち消し、そしてノアへと攻撃が命中する。


ノア

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっつ!!!」


語り

魔法が止む。魔法同士の衝突で生まれた狼煙の中にゆらゆらと影がたたずんでいたそこに立っていたのは無傷のノアであった。


魔女

「効いてない!!?」


ノア

「そうさ…作者である僕には攻撃は通らない…

原作者であり創造主であり神とも取れる存在である僕にはね」


カナ

「そうね。作者である貴方を超えることはできない

原作主義って言葉があるくらいだし、どんな二次創作でも結局は原作を元に作ってる二番煎じだからね。

でもその自身の作品を飽きたとしても、貴方の自らの生み出す作品に対する想いは錆びていないようね」


ノア

「ふふふっあはははははは!!

なるほどねぇ…魔女は世界を滅ぼす事なくひっそりと暮らしました…

つまらないハッピーエンドだね…でもまぁそれもありか…」


語り

目の前からノアは消えていく。その表情は満足げであった。

魔女は立ち上がり近づいてくる。


魔女

「これでいいのかしら…シオンこれでよかったの?」


カナ

「あの、これを」


語り

魔女に先ほど拾ったシオンの手帳を渡す。

恐る恐る手に取り中を開き

そしてゆっくりとページをめくり読んでいく。

魔女の目からは涙が流れ落ちていた。


魔女

「そう…貴方の本名

呼んであげたかった

ごめんね……」


語り

魔女が名前を呼ぼうとすると目の前に花びらが落ちてきた。

その花びらの落ちた箇所にはシオンが立っていた。

シオンは真っすぐに魔女を見ている。

口を開く。今までとは違いシオンの声が耳に届いていた。


シオン

「お姉ちゃん…僕のせいでこんなことに巻き込んじゃってごめんなさい

カナ…約束守ってくれてありがとう」


魔女

「貴方…シオンなの?」


シオン

「僕はずっと蔑まれていた。

ずっと暴力を振るわれて満足にご飯も食べれなくて

でもお姉ちゃんはそんな僕を助けてくれた

そんな僕を愛してくれた

本当にありがとう」


魔女

「シオン!私はあなたを…!!」


シオン

「僕はお姉ちゃんのおかげで楽しいって思えたんだ

ずっと辛かったこの世界でずっとずっと生きたいってそう思えたんだ

だから、世界を嫌わないで、世界を呪わないで…

世界はお姉ちゃんが思ってるよりもいいところだから…

綺麗な花が咲くこの世界を壊さないで…」


語り

シオンが小さく詠唱を唱える。それは歌のように心地の良い声であった。

彼の奏でる唄は魔法ではなく純粋な願いであり、言の葉に全てを乗せた心そのもののようであった。

辺り一面焼け野原であったその場所に草木が生え花が咲き小鳥の囀りや動物の鳴き声が響き、自然が大草原のように広がっていった。


シオン

「ほら。世界はこんなにもキレイだから

僕はちょっとだけ離れたところから見守ってるよ

お姉ちゃんが僕を守ってくれたように

今度はお返しさせてほしい」


魔女

「…シオン。私もシオンのおかげで

人を愛するってことを知ったの。

こんなに温かい気持ちがあるなんて今まで知らなかったから

こちらこそ、ありがとう」


語り

魔女はヨツバに向けて笑みを浮かべて真っすぐに向かい合う。


魔女

「ヨツバ…愛しているわ!」


ヨツバ

「僕もだよ。シラユキ」


語り

そう言い残すとヨツバの身体が光を放ち徐々に消えていく。

その光が辺りに生命を宿しながら消えていく。

ヨツバの立っていた場所にはシオンの花が咲いていた。

魔女は少し空を見上げたあとカナの方を向いた。


魔女

「ごめんなさい…いろいろと巻き込んでしまって」


カナ

「そんなことないです!こちらこそ魔女さんを誤解してました…

ごめんなさい!」


魔女

「いいのよ…慣れたことだしね。

それより貴女もそろそろ帰るのよね?」


カナ

「多分…そうなんですかね?」


魔女

「貴女は本当に優しくて強い子なのね。名前をもう一度聞いてもいい?」


カナ

「カナです」


魔女

「いい名前ね…」


カナ

「あの…えっと魔女さん…・」


魔女

「シラユキでいいわよ」


カナ

「シラユキさん…はい!

シラユキさん…私は元々人と関わるのがずっと苦手で

それで嫌われていたし…友達もいなくて

本を読んでいる間はそれを忘れられる気がして

それで逃げてて…私は強くなんて…」


シラユキ

「そんなことないわよ

貴女の世界だって貴女の考え方次第でもっと変わるはずよ

価値がないなんて思う必要なんてないのよ

その世界に価値を見出すのは周りの人であっても

そこに意味を持たせるのは貴女なの

だからまだ答えを出すのは早いんじゃなくて?」


カナ

「…私にできますかね?」


シラユキ

「きっとできるわ、頑張りなさい」


語り

それを聞くとカナの身体が次第に消え始めた。


カナ

「あ…時間ですかね」


シラユキ

「そう…カナちゃん、ありがとね」


カナ

「はい!こちらこそ…ありがとうございます!」


語り

そうしてカナの意識が覚めると図書館の机に顔を伏したまま本を枕にして寝ていたようです。

その本のタイトルは「愛の魔女」

そして作者には自分の名前が書かれていました。


ルートA HappyEnd

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