第16話 物部氏の祖神 ニギハヤヒ(前編)

 古代の軍事氏族 物部氏の祖となる神の名を饒速日命ニギハヤヒノミコトという(天照国照彦火明櫛玉饒速日命、櫛玉神饒速日命、邇芸速日命...etc。以下、ニギハヤヒ)。

 ニギハヤヒと聞いて、私がすぐに思い付くのが、『千と千尋の神隠し』(2001年公開)に登場する おかっぱの美少年 ハクの本名だ。ネタバレとなるので ハクの本名・正体など あまり詳しいことは述べないが、名には重要な意味があり、その存在の性格・特性など様々な意味が込められていた。

 『千と千尋の神隠し』は 日本において長らく興行収入トップであったが、先頃『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(2020年公開)にトップの座を奪取された。かの作品は 大正時代の日本を舞台とし 鬼を滅する話だが、鬼の起源ルーツは 怨霊であり、タタリと関係。古においては 怨霊は滅するものではなく、祓うものであった。

 ちなみに、『鬼滅の刃』の主人公 竈門炭治郎の名称は福岡県太宰府市にある竈門神社に由来するものと囁かれている。そして、同じ太宰府市にあるのが全国天満宮の総本社とされる太宰府天満宮だ。かのやしろに祀られているのが"学問の神様"として知られる菅原道真公だが、かの人物の死後、雷が平安京の内裏における殿舎の1つ清涼殿に落ちるなどタタリと思われる事態が頻発。道真は日本三大怨霊の1人として数えられていた(他は、平将門・崇徳天皇)


 さて、物部氏の祖神 ニギハヤヒについてだが、正史『日本書紀』等によれば、初代 神武が東征するより前に、皇祖神 天照大神から十種の神宝を授かり 天磐船に乗って 畿内に天降ったとされている。その際、中臣氏や尾張氏の祖神などを伴ったとされているが(『先代旧事本紀』)、これは 天孫ニニギの「天孫降臨」神話とは別系統の説話だと考えられている。

 ニギハヤヒは 降臨後、畿内での覇権を確立したが、その後、ニニギの後裔である神武の東征を受けることとなった。

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