第12話 蘇我氏と出雲(前編)
私は、正史『日本書紀』の編纂命令者である天武天皇(第40代)は 神話において古代の有力豪族 蘇我氏を顕彰していたのではないかと推量している。
だが、その神話の内容は、天武の次代 持統女帝(41代)によって 改変されたのではなかろうかと私は憶測している。当時の天皇家の系譜と神話の系譜を比較すると、伊勢神宮に祀られる最高神 天照大神には蘇我氏全盛期の女帝 推古天皇が比定されていることが窺えるが、かの女神の「天孫降臨」神話には 持統女帝が孫に皇位を継承させたことが投影されたと一部で指摘されていた。
自分が崇敬する最高神に自らの事跡を上書きすることは酷く不敬あることから、大方、前代の人物が想定していた最高神が気に食わず、後代の人物が幾重にも塗り替えたのだろう。
私は、この神話の内容の変遷を 天武の流れと持統の流れの対立の証左だと考えているが、持統女帝が皇祖神 天照大神に比定されているとすれば、その皇配 天武が比定されるのは天照大神の妹背である"荒ぶる神"スサノオ。かの神は 天界で大暴れし、そこから追放されていた。
敏達-⬜︎-舒明-天智・天武-草壁-文武
‖
推古(日食:628年)
| 密通?
蘇我馬子
天照(「天岩戸」神話)
‖-⬜︎-ニニギ-海幸・山幸-草不合-初代
スサノオ
⬇️
天照大神—□—ニニギ
‖
スサノオ—大国主
持統女帝—□—文武天皇
‖
天武天皇—高市皇子
ちなみに、スサノオが天界で暴虐を働いている間に太陽神 天照大神が岩屋に隠れて世界が暗闇になる「天岩戸」神話が描かれているが、これは推古女帝の晩年に起きた日食(628年)が反映されているのではないかと私は胸算している。この時代 日食は大変不吉なものであり、正史『日本書紀』の元々の編纂命令者 天武天皇が自らが最高神の晴れ舞台と想定する場面に陰を落とすとは思われないことから、恐らくは天武の次代 持統女帝が天皇家の暗黒時代を神話に仮託し表現したのだろう。推古の時代 栄華を極めていたのは蘇我氏であり、かの一族とスサノオとの関係が疑われた。
なお、日食によって新たに出てくる"新"天照から着想を得て、持統は天照大神に自分を投影させること思いついたのではないかと私は当たりをつけている。
天照大神—「天岩戸」—"新"天照大神
(推古女帝)—————→(持統女帝)
あと、"スサノオ=天武天皇"だとすれば、その子"大国主=高市皇子"になるが、この構図は 史実において 「天孫降臨」神話において、"天照大神=持統女帝"が孫への継承を行う上で 障害となった点でピタリと符合した。又、大国主に国譲りを迫った
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