第10話 「海幸山幸」神話

 日本神話の一つ「海幸山幸」神話は、浦島伝説などの先駆的説話として位置付けられている。

 とは言っても、若年層には馴染みがないというのが実情だと思うので、言い換えれば、『パズル&ドラゴンズ』略して『パズドラ』に登場するウミサチヤマサチの元ネタだった。

『バズドラ』に対する詳しい知見を私は持っていないが、少なくとも それは、基本的な属性は踏まえているようであった。

 それでは、早速 元ネタである方の「海幸山幸」神話について簡単に述べ表していく。


 天孫 ニニギの子 海幸・山幸兄弟は、兄 海幸彦が海で漁をして、弟 山幸彦が山で狩りをして生活していた。

 あるとき、2人は弟である山幸彦の強い頼みにより、互いの道具を交換した。これによって海幸彦は山に猟へと出掛け、山幸彦は海に漁へと出掛けた。

 しかし、普段やり慣れないことは 上手くいかないもので、その日 2人はついに獲物を獲得することができなかった。山幸彦に至っては兄から借りた釣り針を魚にとられる始末。そして、その事実を知った兄 海幸彦は当然ながら激怒した。以降、海幸彦は 弟 山幸彦に辛く当たることとなった。

 これに弱り果てたのが、山幸彦。自分の剣を砕いて山盛りの釣り針を作るものの、兄の返事はつれなく、結局、山幸彦は海の中へと兄の釣り針を探しにいく羽目となった。

 潮の神 塩土老翁の協力を得て、やっと辿り着いた海神の宮。そこで 山幸彦は海神の歓迎を受け、しかも海神は自分の娘(豊玉姫)を嫁として差し出してきた。

 そうして、山幸彦が海神の宮に留まり住んで、3年の刻が経過した。そこは安らかで楽しいところであったが、山幸彦にも やはり故郷を思う心があり、時にひどく嘆き、ため息をつくことがあった。

 それを陰で見ていたのが、海神の娘である豊玉姫。彼女は そのことを父である海神に相談した。

 娘から相談を受けた海神は 早速、山幸彦を招き、彼から 彼と兄との経緯いきさつを聞き、海の生物を集めて釣り針を捜索した。すると、赤い鯛ののどから ようやく探していた兄の釣り針が見つかったのだった。

 そして、海神は おかに帰る決心をした山幸彦に、兄 海幸彦を懲らしめるための助言と海の秘宝を授けて、海神の宮から送り出してくれた。

 陸に上がって兄に釣り針を返す際、山幸彦は海神に教えてもらった呪文を唱えた。それは呪いの言葉だった。

 これにより、海幸彦は収穫が激減。困窮した海幸彦は、「これはきっと弟のせいに違いない」と考え 山幸彦へといくさを仕掛けてきた。そこで、山幸彦は 今度は海神から貰った海の秘宝で 海幸彦を懲らしめ、ついには、兄は弟に服従するようになったのだった。


-この物語の中で、海幸彦が兄、山幸彦が弟であるわけだが、彼らが天智・天武 兄弟に比定されると私は胸算していた。

 だが、何となく違和感を覚える。というのは、弟である天武天皇の名を大人皇子というからだ。もし、2人の兄弟関係が かの神々に投影されていることが事実だったとすれば、兄弟関係の逆転もそこに反映されていたのかもしれない。物語の中で、かの神々は

 まぁ、海幸彦・山幸彦というのは 実際には彼らの本名ではないし、また、単なる偶然という線も大いにあり得る。では、他の神話はどうなのか?

 なお、天武天皇こと大海人皇子を象徴する"海"を冠する神が争い事に敗れているのは,やはり、天武と対立する勢力が最終的に史書を編纂したからだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る