第9話 日本神話
神話や伝説には、当時の状況が少なからず反映されていると憶測されている。
外国の例で言えば、「ノアの方舟」は 三角州にあった都市が水没したことが投影されたと見られているし、この国の例で言えば、皇祖神 天照大神の神話「天孫降臨」は 持統女帝(第41代)が自らの孫に皇位を譲ったことを神格化したものと見做されていた。物語を構想・著述する上では、何のかんのと言っても、
持統は 先代 天武天皇(第40代)と対立関係にあったのではないかと私は疑っているが、それは 神々の内実からも窺える。正史『日本書紀』は 天武天皇が命じ 編纂されたものであるはずだが、それにも関わらず、かの書物では天武の次代 持統女帝が投影された女神が最高神として掲げられていた。
そして 私は、持統女帝は もともと天武が構想していた神話を造り変えたのではないかと胸算している。持統が投影されていると思しき天照大神の神話には「天岩戸」と呼ばれるものも存在するが、それは 日本史上初の女帝 推古天皇(第33代)の晩年に起こった日食が投影されているのではないかと私は当たりをつけていた。恐らく 既に 推古女帝が投影されていた天照大神に持統女帝が更に投影されたのは、持統にとって 推古が
とまれかくまれ、"天照大神=推古女帝"として神話と当時の天皇家の系譜を見比べると、面白いほど上手く符合した。詳しくは 後述する。
皇祖神 天照大神は 孫であるニニギを地上に降臨させているが、推古の次代 舒明天皇(第34代)は彼女の孫世代に当たっている。
このニニギの子が 海幸・山幸の"兄弟神"であり 舒明の子 天智・天武 兄弟に比定されるが、この神々にまつわる一連の物語の中で ひどく私の興味を惹きつけるものがあった。
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