第6話 統を持つ

 6世紀後半から7世紀にかけて、東アジアは 大国が統一した余勢を駆って 周辺に触手を伸ばしたことにより、剣呑な空気に包まれていた。

 その後、唐王朝が 韓半島の一国 新羅と結んだことによって、時代の流れが一気に加速。660年に 日本と関係の深かった半島南西の国 百済の首都が陥落し、668年には 隋・唐を散々に苦しめた高句麗が滅亡した。

 半島に 新羅のみが残ったところで、唐朝は 倭国に使節を派遣する(671年)。何を求めた使節かは 確たる史料がないため ハッキリとしないが、おそらく、唐と結び 新羅を討とうと持ち掛けられたのではないかと憶測されている。

 しこうして、大方 この同盟の是非を巡って国内が二分。古代史上最大の内乱 壬申の乱は 一般に、第38代 天智天皇の跡目をめぐる骨肉の争いだとばかり語られているが、その背景として、国際情勢の緊迫化が絡んでいた。


 壬申の乱の結果として、権力は天皇家から素姓の怪しい人物 天武に移ったが、果たして 天武天皇(第40代)とは何者だったのか? 

 正史『日本書紀』の記述等から その正体を探っていきたいと志向するが、まず その前に大前提として確認しておきたいことは、 ということだ。

 一説には、天皇家の万世一系をおもんぱかったとも囁かれているが、それはあくまでも 天皇家の都合であり、天武自身がそれを気にするというのは 少々 腑に落ちなかった。

 ここで 先に結論を述べてしまえば、私は、天武天皇の正体を隠したのは 彼の后であり 又その次代でもある持統女帝(第41代)なのではないかと考えている。持統は、天智天皇の娘で、かつ 壬申の乱の敗者 大友皇子とは姉弟関係にあり、れっきとした天皇家の血を受け継ぎ、後に"血統をたもつ"というおくりなを贈られていた。

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