第16話
「まずは甥でも簡単に狩れる魔獣からです。
こいつらをあまり出すと、侯爵閣下の領地経営に影響すると思います。
数を決めてください」
おれは最初にもっとも狩りやすい牙兎・角兎をだした。
次にある程度実力がないと狩れない、大鼠と大蛙をだした。
大鼠は鋭い前歯で噛みつかれると致命傷になるし、大蛙は結構強力な毒を吐くので、解毒薬を用意できない冒険者では狩れないから、少々高価な肉になる。
「ふむ、確かにこれらはあまり大量に売り出されると困る。
文官と話し合って売り出してくれ」
「ええ、最初からそのつもりでした。
次はなかなか狩れないので、庶民には買えませんから、領内の産業に影響しないと考えています。
富裕層に肉を売って、皮や牙などの素材は加工して輸出すれば、領地の新たな産業になると考えています。
鉤竜の競売時に一緒に一頭競売にかけてもいいでしょう」
俺はそう言いながら、大蜘蛛とオークと大蜥蜴を魔法袋から取り出した。
大蜘蛛は虫系の魔物で、魔蟲という分類になっている。
大蜘蛛の外骨格は、部位によれば加工次第で素材になる。
小札鎧の材料にもなれば、ナイフの材料にもなる。
普通の冒険者の物理攻撃は通じないので斃しにくい。
何よりも問題なのは強力な毒牙をもっていて、その牙でかまれると専用の高価な解毒薬を使わないと死んでしまう事だ。
だがその毒は暗殺や狩りに使うと効果てきめんなので、無傷で毒腺を手に入れることができれば、高値で売ることができる。
それに肉というべきか身というべきかは悩むところだが、食べると無茶苦茶美味いのだ。
今ではもっと高階級の魔蟲を狩れるからそれほど執着しないけど、異世界に来た当初は、蟹を思い出す味なのでよく狩ったものだ。
オークは皮が柔皮鎧に使えるし、睾丸は精力剤、肝などの内臓も魔法薬の素材になるから結構高値で売れる。
肉は高級ブランド豚肉と同じように美味しいらしい。
らしいというのは俺が食べたことがないから。
顔以外は全く人間と同じオークは、とても食べる気にならなかったのだ。
問題は同じ体格の人間の三倍以上ある筋力だ。
怪力無双のオークの群れ、しかも戦闘職や魔法職、中にはハイオークやジェネラルオークと呼べるような、レベルアップしたオークがいるのだ。
並の冒険者が狩れる相手ではない。
最後の大蜥蜴が一番強くて狩りにくい。
三メートルにもなる巨体から放たれる尻尾の攻撃はオークに匹敵する。
鋭い牙のはえた口で噛みつかれたら、鉄の板金鎧なら鎧ごと腕を噛み千切られる。
しかも唾液に強力な腐敗毒が含まれているので、特殊で高価な解毒薬がないと、軽く噛まれただけでも身体が腐って死んでしまう。
しかしその分狩れれば金になる。
全身を覆う小さな鱗は鱗鎧の材料となるし、内臓も血も魔法薬の素材になる、なんといっても肉が美味い!
高級ブランド鶏以上に旨味があるのだ。
この時点で侯爵が眼を白黒させている。
まだまだこれからですよ、侯爵殿。
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