第14話

「本当に売っていただけるのですか!」


「ああ、だが競売で俺の希望額を超えた場合だけだ。

 だからできるだけ買い手を集めてもらう。

 そうでなければ不成立で冒険者組合も商業組合も利益が出ないからな」


「分かっております!

 領主様にもお知らせして、友人知人にお声掛けしていただきます!」


 冒険者組合の組合長は真っ赤になっている。

 初めて見る亜竜種の鉤竜に興奮しているのだろう。

 まあ、その気持ちは想像できる。

 冒険者組合の頭を張っていても、亜竜種を見たことはないのだ。

 それを見たばかりか、自分が主導して競売を開けるのだ。

 領主である侯爵に亜竜を狩ったことを報告できるのだ。

 興奮して当然だろう。


 だがあまり時間がかかるのも困る。

 できれば次々と売っていきたい。

 蓮に関わる費用は、俺の国の経費とは別にしておきたいのだ。

 まあ、普通は王の個人資産と国の資産をわけたりしない。

 国が亡ぶことを気にしなければ、国民から集めた税金を全て王の遊興費に充てたって構わない

 そういう感覚の異世界だ。

 地球からやってきた勇者が建国した国でも、そういう国が多い。


 だが俺は嫌だった。

 自分の遊興が過ぎて、民が貧困するなど良心が許さない。

 だから最初の村を開拓した時から、個人のお金と公的なお金は厳格に分けてきた。


 当然の話だが、最初は持ち出しばかりだ。

 個人資産を投入して、村を開拓したり町を興したりした。

 だから発展した後は無制限に徴税しても構わないという理屈を言う勇者もいる。

 だが俺は嫌だったのだ!

 せっかく異世界に来ることができて、勇者といえるほどの力を得たんだ。

 理想の国を作らいないでどうする!

 中二病全開にして何が悪い!


 だから投入した個人資産は正確に記録し、発展したら個人に返済する方式とした。

 別に回収しなくてもいいのだが、街を預ける人間に、村を開拓し町を興すのがどれだけ大変で、資金が必要なのかを伝えておく必要がある。

 棚から牡丹餅で、これからもお恵みしてもらえると思うなと、厳しく注意しておきたかった。

 

 まあそんな考え方なので、蓮の教育に使う費用は、蓮と一緒に来てから狩った獲物を売って稼ぐことにしている。

 本当は蓮と二人で狩った獲物だけにしたいという理想はあるが、それでは蓮のために使える資金が少なすぎる。

 武器も装備もケチって蓮に何かあったら一生後悔する。

 自分の事だが、何とも中途半端で甘いことだ。


「ああ、それと最初に言っておく。

 俺が満足できる競売金額で売ることができるのなら、これからも定期的に鉤竜の競売をここで行ってもらう。

 そのつもりで頑張ってくれ」


 俺はそう言って魔法袋から五頭の鉤竜を取り出して、組合長の前に積み上げてやったら、脳卒中を起こすんじゃないかと心配になるくらい真っ赤になっていた。

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