第11話
「そんな事を言われたら、亜竜を狩って欲しいと言いたくなります。
亜竜が手に入れば、一財産築けますからね。
ですが騎士様でしたら、母国に独自の販売先をお持ちなのでしょ?
そちらを利用された方が、利益が多いのではありませんか?」
「そうだな。
亜竜級の獲物なら、独自の伝手を使った方が高価に買い取ってくれるかもしれないが、一度は俺から口にした事だ。
なかったことにするのは心苦しいな。
実際に狩って来て現物を見せよう。
その上で俺が先に値付けをするから、親父が売り先を探す努力をしてみてくれ。
俺の付けた値段以上で売れた分は、親父の儲けにしていい」
「ありがとうございます。
そうさせて頂きます」
親父は半信半疑だった。
勝人がただ者ではない事は十分理解していたが、それでも亜竜を単独で狩るというのは非常識もはなはだしいのだ。
実際問題、ここ数十年この国で亜竜が狩られたという話はない
異世界から召喚された勇者達が亜竜を狩ることがあるので、大国大貴族の領都であるこの都市には、竜肉や竜脂と言われるモノが出回っているが、本物かどうか分からないとても怪しい品物だ。
この都市の近くにも亜竜が住むと言われる魔境はある。
亜竜を狩ると豪語して魔境に挑んだ騎士や冒険者は、過去それなりにいた。
異世界から来た勇者が亜竜を狩ったという噂に触発された愚か者がいたのだ。
だがそんな騎士や冒険者は、ことごとく戻って来なかった。
騎士は数十人の従者を率いる、騎士としては大きな領地を持つ実力者だった。
冒険者も数十人を束ねる戦闘団の頭領だったのだ。
だが誰一人戻って来なかったのだ!
勝人は急いで教えてもらった魔境に行った。
周辺部には比較的弱い魔獣しかいなかった。
魔獣の生態として、魔力の強い所に集まる習性がある。
恐らく魔力がないと魔獣は生きていけないのだろうと、勝人は推測していた。
中心部近くには多くの亜竜、特に地竜種が生息していた。
どうせ狩るのなら、小さい亜竜より大きい亜竜の方がいいと、勝人は考えていた。
新たな都市で暮らして行く以上、有力者実力者として遇された方が動きやすい。
犯罪者組合など怖くはないが、付き纏われるのは不愉快だし、蓮の前で人殺しはしたくなかった。
過去には仕方なく嫌になるくらい人を殺していたが、可愛い甥っ子に人殺しと思われたくなかった。
だから大型の亜竜を狩ることで、絶対に逆らえない相手だと知らしめようとした。
それにこの都市で亜竜を売れば、犯罪者組合にも莫大な利益が流れる事になる。
恐怖と利益を与えることで、安全を確保しようと考えたのだ。
そして勝人は、狩るのに丁度いい亜竜を発見した。
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