第9話
「俺の貸した装備や武器、衣服は絶対に脱ぐな。
重くても苦しくても臭くて脱ぐな。
それには蓮の場所を教えてくれる魔法や護ってくれる魔法をかけてある。
脱ぎさえしなければ、少し時間はかかっても探し出してやる。
誘拐犯が拷問しようとしてもそれさえ着ていたら大丈夫だ」
「分かった。
あ、でも、便所に行きたくなったらどうするんだよ?」
「最初に言っただろ!
覚えてないのか?」
「……忘れた」
「今度は絶対に忘れるな!
分かったか!」
「……分かった」
「何のためにオムツをはかせたと思っているんだ。
オムツの中にしろ、オムツの中に!」
「あ、忘れてた!
本気なの?
しょんべんだけじゃなく、うんこもオムツの中にするの?」
「さっきの奴に誘拐されたいのか?
俺の助けが間に合わない可能性もあるんだぞ。
殺されなくても、狂うほど酷い目にあわされるかもしれないんだぞ。
痛い目にあわされるのは嫌なんだろう?」
「……分かった、いざという時はオムツの中にうんこする」
「だからさっき言ったろ。
したくなったら我慢せず、そのたびに俺の前でするんだ。
蓮が生まれるずっと前に死んだ伯父さん。
蓮から見れば大伯父に当たる人は、釣りに行くたびに野糞していたから、野糞の賢さんと呼ばれていたんだ。
蓮も平気でやれるようになる」
再び実戦訓練に森に入った勝人と蓮だったが、訓練狩りの前にお説教タイムだ。
鉄は熱いうちに打てではないが、誘拐犯を眼にして怖がっているうちに、教えるべきことを叩きこんでおこうとしていた。
勝人は蓮をとても大切にしていたのだ。
だから、狩りをする前に、勝人の前で小便と大便をさせた。
小便はでたが、大便はでなかった。
慣れない間は、なかなか人前で大便はできないものだ。
勝人が蓮に教えておきたかった防犯対策を実地でさせてから、狩りを再開した。
今度狩るのは角兎だった。
繁殖力が比較的強いので、数が多い魔獣だ。
強さと買取価格が釣り合っているので、冒険者に人気がある。
毛皮も角も買いとってもらえるし、肉も比較的美味しい。
もっとも一角猪や双角鹿に比べて小さいので、大量の肉が欲しいのなら不適格だが、それなりに鍛えた平民でも狩れるので、庶民の食卓を豊かにする貴重な食材だ。
だが弱い平民では、狩ろうして逆に殺されてしまうことがある。
強力な後脚を使って角を武器に突撃されたら、皮鎧程度では貫通されてしまい、心臓や頭なら即死、内臓なら化膿して苦しみにぬいて死ぬことになる。
もっとも勝人が蓮に貸し与えた板金鎧ならかすり傷一つつかない。
今回の勝人の目的は、蓮に型を守らせながら高速で移動する角兎に攻撃を当てさせることだった。
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