第6話

「そのくらいでいいぞ。

 城に戻ってスライムを売りに行くからな」


「えぇぇぇぇ!

 まだまだ戦えるよ!」


「身勝手を言うな!

 スライムとはいえ生き物なんだ!

 魔物もこの世界に生きる命なんだ!

 本来は蓮の遊びで殺していい存在じゃないんだぞ!」


「遊びじゃない!

 凛ちゃんを助けるためだ!」


「じゃあ見てみろ! 

 蓮が今殺したスライムにも親兄弟をがいるんだぞ!

 仲間だって恋する相手だっている!

 子供を助けようと庇っている親スライムが見えないのか!」


 蓮が勝人の指差す方を見ると、蓮が夢中で、いや、楽しんで殺したスライムの遺骸に体をすりつけている少し大きなスライムがいた。

 蓮の背中に表現しようのない嫌な感覚が駆け巡った。

 人生初めての自分自身に対する嫌悪感といえるかもしれない。


「……俺、そんな……、殺すのを、楽しんだわけじゃ……」


「この世界はとても貧しい。

 蓮は餓死するような飢えを感じたことはないだろうが、この世界では当たり前だ。

 たから、生きるため、食べるために殺すのは当然だ。

 だが、この世界の人間ではない蓮が、遊びや快楽で命を奪うのは絶対に許さん!

 この世界に連れてきた者の責任として、蓮が遊びや快楽のために殺しをしたら、俺がお前を殺す!

 分かったか!」


「はい!」


 勝人は本気で軽い殺意を蓮に放った。

 勝人の個人的な考え方だが、それを譲る気は全くなかった。

「お天道様に恥ずかしくない生き方をしなさい」

 と言う祖母の教えで、勝人自身には伝える子供がいない。

 だから身勝手ながら、唯一の後継者である甥に伝えたかったのだ。


「蓮が強くなるため、凛ちゃんを助けるために殺した命は、ちゃんと活用しなさい。

 自分で食べろとは言わないが、活用してくれる者に売りなさい。

 それに売れば凛ちゃんを助けるための薬を買うこともできるだろう」


「はい!」


 勝人は蓮を連れて都市に戻った。

 転移魔法を使うほど都市から離れていないので、少し能力が上がった蓮にそれを実感させるために、走って戻った。

 都市とはいっても、他の地球人召喚者が作った都市に入ると戦争になりかねない。

 かといって自分が建国した都市だと、蓮の教育にならない。


 だから完全に異世界人が発展させた都市を選んだのだが、大国の王都でも都市住人は五万人以下だ。

 小国の王都で一万人から二万人しかいない。

 大国大貴族の領都で一万人前後だが、この国にそんな都市は十五しかないが、日本では都道府県によって、村と町の人口要件を満たすか満たさないかの人口だ。。

 中小貴族の領都は千人から二千人。

 中には五百人以下という領都すらある。

 そんな中で勝人が拠点に選んだのも、大国の大貴族領都だった。

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