第4話
「すっげぇぇぇぇ!
すっげぇぇぇぇ!
すっげぇぇぇぇ!」
蓮が騒ぎ立ている。
勝人が頭を抱えている。
異世界に連れて行く前に、口が酸っぱくなるくらい静かにしろと注意していたの全く無駄になったからだ。
まあ、こうなるのを予想していた勝人ではあるが、保護者として言わずにいられなかっただけだ。
「黙れ!」
勝人が蓮の頭に拳骨を落す。
平成日本では児童虐待だと騒がれる事案だが、異世界では当たり前の光景だ。
召喚された地球の人間が改変した地域以外は、中世初期のままだ。
まあ神様が創世した世界だから何でもありなのだろうが、地球人が改変した地域の分だけ世界が広がるというのは酷過ぎる。
大気圏の限界まで飛翔して、俯瞰してみれば地球と同じような地平線が見えるので、球形の惑星上の世界のはずなのだが、謎過ぎるのだ。
「痛い!
児童虐待で訴えるよ!」
「馬鹿野郎。
ここは蓮が望んだ異世界だ。
蓮がゲームで平気で敵を殺すように、人間同士が殺しあい、奴隷までいるんだ。
児童虐待なんてものを気にする人間なんか一人もいないんだ。
自分が望んだ世界がどれくらい恐ろしところか、よく考えろ。
いいか、俺から絶対に離れるなよ。
ここはまだ治安のいい都市だが、それでも蓮くらいの子供をさらって奴隷として売り飛ばす人間は、履いて捨てるほどいるんだ。
いつでも俺が助けに行けると思うなよ!」
「なんだよ、それ!
記録やリセットできないのかよ」
「ギャァァァァアァアァアア!」
蓮が不貞腐れて吐き捨てた直後に、断末魔がこだました。
奴隷主が働けなくなった奴隷を斬り殺したのだ。
病気になったりケガをしたりした奴隷は、よほど能力のない者は、治療費の方が高く食事代ももったいないと、死ぬまで待たずにその場で殺されるのだ。
勝人はこうなる事を予測していたのだが、蓮の教育のために見て見ぬふりをすることにしたのだ。
「!……おじさん、あれは、なに!」
「働けなくなった奴隷は、食事を与えるのも無駄だから、直ぐに殺されるんだ。
蓮も俺からはぐれて奴隷にされたら、ああなるんだ。
覚悟しておけよ」
「そんなぁ、酷過ぎるよ!」
「異世界は危ない、絶対に連れて行かないと言ったのに、連れて行ってくれないと異世界のことをみんなに話すと俺を脅したのは蓮だ!
自分の言動の責任は自分で取らないといけない。
日本なら嘘つきといわれるだけだが、異世界では死につながる。
どうだ、今からでも帰るか?」
「……いやだ、ここにいる。
凛ちゃんがコロナになったら僕が助けるんだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます