第3話

 勝人はちょっとだけ蓮を連れて行ってもいい気がしたが、直ぐに思い直したのだ。

 前回の異世界召喚があまりに酷かったので、この神様の言う事は信じられない。

 そう思い直したのだが、事もあろうにこちらの神様まで現れて、あちらの世界に行っても大丈夫だと太鼓判を押したのだ。

 前回あれほどあちらの神様に怒っていたのにだ。

 あまりにも怪しすぎる!


「天児屋命、どんな裏があるんですか?」


「特に裏などない。

 ただ、他の神々との力関係だ」


「他の神々ですか?」


「今回の新型コロナウィルスの件では、多くの人が神に祈っているんだ。

 神様としても、祈られたら何とかしなければならない。

 特に自分の信者さえよければいいという一神教の神は、なりふり構わず奇跡を起こそうとしやがるんだよ」


「聞きたくなかった話ですね。

 そんなに身勝手なんですね」


「いまさら何言ってやがる。

 神様が身勝手だというのは、あっちの世界でも、この世界の歴史でも、嫌というほど学んだんじゃないのか?」


「そうですね。

 そうでした。

 嫌というほど学びましたよ。

 それで神々で話し合って、あちらの世界から特効薬を取り寄せるんですね」


「ああ、不意に思いついた形にして、医学者の頭に刷り込むんだ」


 勝人は祖神の一柱の言葉だけでは信じきれないので、もう一柱の祖神、八幡神にも確かめたのだが、答えは同じだった。

 しかたなく、もう一度あちらの世界に行くことにした。

 二度と行かないと心に固く誓っていたのに、誓いを破ることになってしまった。

 甥っ子に自慢したくて、異世界の話をしたのが運の尽きだった。


 蓮が諦めてくれたらいいのにと、心の底から思っていた勝人だが、初恋の相手を心配する蓮が諦めるはずがないのも理解していた。

 だから万全の準備をしに、一人あちらの世界に戻った。

 自分が建国した王国の中心に存在する、あらゆる敵を寄せ付けない大城郭に行き、蓮と蓮が連れてくるかもしれない友達の装備を準備した。

 どうせなら蓮の初恋相手が見てみたいと思っていた。


 当然だが、普通の薬も魔法の薬も用意した。

 金銀財宝も莫大な金額準備した。

 蓮と蓮の友達には、少しの危険にもあわせる心算はなかった。

 だが同時に、どうせなら十分体力と能力を与えておいてやりたかった。

 天児屋命と八幡神が許可したのだから、少しも遠慮する心算はなかった。


「伯父さん開けてよ!

 僕だよ、蓮だよ。

 今日から学校が休みになったんだ。

 絶対に秘密は守るから、一緒に連れて行ってくれよ!」


 勝人は心から残念に思っていた。

 小学生に周りへの配慮を求めても無駄だと分かっていたが、今の言葉を聞いた御近所さんが、勝人が甥っ子をどこに連れて行こうとしているのか、どんな誤解をしているのかと思うと、思わずため息が出てしまった。

 

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