Suicide Express─自殺特急─

結城彼方

Suicide Express─自殺特急─

 ある田舎町の古びた駅には不思議な噂があった。最終電車が出発した3時間14分42秒後、不気味な電車がやってくると。その電車はSuicide Express自殺特急と呼ばれており、乗った人間をあの世に連れていってくれるというのだ。

 男はその噂を聞いて、夜中の3時にこの駅へやって来た。理由はただ一つ。死にたかったからだ。いや、というよりも消えてしまいたかった。

 男が駅のホームでしばらく待っていると、時間通りに例の電車がやって来た。Suicide Express自殺特急だ。男は電車に乗り込み、周りを見渡した。他に乗客はいないみたいだ。しばらく経つと扉が閉まり、発車した。男は列車の中から外の風景を見ていた。暗くてよく見えないが、街の夜景がほんの少しだけ見えていた。しかし、だんだんと外は真っ暗になっていき、何も見えなくなった。

 周りに何も見えなくなってから1時間ぐらい過ぎただろうか、電車は終点駅「あの世」に到着した。電車から降りてみると、辺りは真っ暗で何も見えない。駅から出て恐る恐る歩いていくと、ほんのりとした明かりを灯すバーが1軒あった。看板には「天国あまくに」と書かれていた。中に入ると誰もおらず、ただ、一杯の酒だけが用意されていた。男は酒を飲むといつの間にか眠ってしまっていた。

 目を覚ますと、朝になっており、Suicide Express自殺特急に乗った時の駅にいた。あれはただの夢だったのか?そう思いつつ朝日を浴びながら男は自分の家に向かった。そんな彼の足元には影が無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Suicide Express─自殺特急─ 結城彼方 @yukikanata001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ