第4話

「マルティン。

 マルティンはどんな方法で復讐がしたい?」


「誇り高く一対一の決闘で復讐がしたい。

 あいつらのような騙し討ちは嫌だ。

 確かに目には目を歯には歯をという言葉はある。

 だが俺はあいつらのような卑怯者と同等になる気はない。

 誰が相手で、どのような卑怯な手を使って来ようと、正々堂々とした戦いで討ち破れる力を手に入れたい。

 そのような方法で復讐がした」


 私の眼に狂いはありませんでした。

 ひとめ惚れしたマルティンですが、改めて惚れ直しました。

 何があっても護って見せます!

 どうしても必要ならば、マルティンが気づかないように、私が卑怯な謀略をしかけることも可能ですが、その必要はないでしょう。


「分かりました。

 だったら私がマルティンの回復を手助けしましょう。

 身体は治しましたが、昔のように戦えるかは分かりません。

 一度戦ってみましょう」


 口ではそう言いましたが、月神テーベと癒しの聖女アリスの娘で、半神とは言え上位の神に匹敵する力を持った私です。

 その私が全身全霊を込めて治した身体が、元通りでない訳がないのです。

 ですが、元通りでは不安なので、私がマルティンを強くします。

 まだ引き出されていない潜在能力を引き出します。

 必要ならば魔術を教えて、魔術戦士に大変身させます。


「分かりました。

 命の恩人であるガブリエラ様に逆らうわけにはいきません。

 御手合せ願います」


 私が今迄抑えていた闘気を少し漏らした事で、マルティンも本気で刃を交える決断ができたのでしょう。

 キラニという三下戦士とゴロツキを斃しただけでは、完治したマルティンの相手には不足なのです。

 だからマルティンも本気にはなれなかったのでしょう。


「ですがここではダメですね。

 邪魔が入るのは確実ですし、武器も防具も満足できる物がないでしょ。

 ゴロツキ共の鈍ら武器など、マルティンにはふさわしくありません。

 一旦この町を離れて、しきり直しましょう」


 私の提案に一瞬返事が遅れたマルティンですが、命の恩人である私に逆らう気はないのでしょう。


「分かりました。

 ガブリエラ様のお言葉に従います」


 私はゴロツキ共の身ぐるみを剥ぎました。

 ボロボロの衣服であろうと、貧民に施すことができます。

 野獣から自衛の必要な寒村なら、鈍ら武器でも喉から手が出るほど欲しいのです。

 投擲武器として使うのなら、鈍ら武器でも役に立ちます。

 

 それはそれとして、私の魔法袋にはマルティンにふさわしい名刀や名槍、鎧や盾がたくさんあります。

 それを与えれば、今からでもマルティンを罠に嵌めた者達を殺せます。

 ですがそれでは、マルティンと二人きりの時間が作れません。

 マルティンとの武術練習は、一種のデートですから。

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