第26話

「お嬢様、急ぎ移民を募集しましょう。

 ここを放置するのはもったいなさすぎます」


「私もそう思っていました。

 ですが地下領都の治安を維持する家臣が最優先です。

 それと冒険者と狩人ですね。

 地下にいる魔獣を狩って生計を立てるものでなければ、地下領都で生活するのは難しいでしょう。

 それと、召し抱える家臣の数です。

 私の代は幾らでも家臣を増やせますが、次の代になれば、冒険者や狩人が納める税に応じた家臣にしなければいけなくなります」


 ジョージが顔を赤く染めています。

 私とジョージの子供が領地を継いだ時の事を考えているのでしょう。

 かわいい事です。

 しかし、急に真顔になりました。

 なにかいい案が浮かんだのでしょうか?


「それならば、狩猟権を与える事を報酬とした家臣を召し抱えましょう。

 今でも山林の利用権や、河川の漁業権を報酬としている家臣はおります。

 特に高価な獣や魚が獲れる山林や河川の権利は大きな、報酬になっております」


「しかしそれは、山林や河川の領主権ではないのですか?

 ダンジョンの一角に領主権を与えるわけにはいきませんよ」


「領主権ではなく、狩猟権に限ります。

 それと無制限ではなく人数制限をいたします。

 徒士家や騎士家を維持できるだけの人数にするのです。

 例えば徒士家なら家族と卒族を加えて五人としたり、騎士家なら家族と卒族を加えて二十人とするのです。

 それと、横穴式住居を徒士家や騎士家の屋敷として貸与するのです」


「……冒険者や狩人からは税をとり、横穴式住居の使用料金をとるのですね。

 それで家臣との差をつけるのですね。

 税金はどれほどにするのですか?」


「一般的な冒険者や狩人の税金は五公五民ですが、民の五割の中には冒険者ギルドの手数料が加わっていますから、冒険者ギルドを排除して七公三民とすべきです」


「そのように高額な税率で人が集まるでしょうか?

 冒険者ギルドを入れなくて、冒険者や狩人は不安に思わないでしょうか?」


「大丈夫でございます、お嬢様。

 地下領都はベヒモス様に賜ったものでございます。

 光を放つ特殊な苔が全ての横穴式住居に自生しております。

 籠城のことまで考えて、横穴式住居の奥には食用の茸や苔、オリーブやザクロまで生えています。

 自分がダンジョンで死ぬことになっても、家族が飢える事がありません。

 ある程度の蓄えがある有能な冒険者が、家族の将来を考えて、先を争って仕官を希望するでしょう。

 慣れた狩場を変えない慎重な狩人も、家族のために横穴式住居を長期で借りようとするでしょう。

 大丈夫でございますよ」


 ジョージが自信満々です。

 これは試しに採用した方がいいですね。

 他の家臣たちに、ジョージを信用信頼する姿を見せておく必要があります。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る