第22話

 ジョージが歯を食いしばって耐えているのが分かります。

 ジョージも準男爵の士族位を持っています。

 マクリントック公爵家の分家の家柄です。

 第二王子を婿に迎える意味は十二分に理解しています。

 だから自分の恋心を抑えて耐えてくれているのです。

 そしてそれは私も同じです。


「分かってくれているようだね。

 では条件を話させてもらおう。

 この条件は国王陛下である父上の許可を得たモノだ。

 大臣連中も、もろ手を挙げて賛成している。

 それを知っておいて欲しい。

 王族も王国も心から願っている条件なんだ。

 二人なら嫌でも分かってくれてるとは思うが、今の王家王族は、オリバー王太子殿下の愚行で窮地に立たされてる。

 今のままでは有力貴族の離反が現実になってしまう。

 それをふせぐためには、王家の資産を全て放出してでも、貴族たちの損害を補填しなければいけない状況になっている。

 だから本来なら私が婿入りする際に必要な、持参金も台所領も用意できないのだ。

 私が持ってこられるのは、公爵の家格と幾つかの従属爵位だけだ。

 だが、マクリントック公爵家にとっては悪い条件ではないと思う。

 アイラ嬢は王太子妃を経て王妃となられる。

 オリビア嬢は公爵妃となり子供は公爵家を継ぐ。

 本来なら陪臣準男爵の当主にしかなれない子供が、公爵となれるのだ。

 この条件で結婚してもらえないだろうか?」


 アーサー王子が真摯に話されました。

 ジョージが歯を食いしばって最後まで話を聞いてくれました。

 私も真剣に内容を吟味しました。

 確かにマクリントック公爵一族には、悪い条件ではないと思います。

 私の家臣となる者は、陪陪臣となるべきところを、陪臣となるのです。

 分家の者はもちろん、家臣たちの立場に立てば、陪臣準男爵家の家臣で陪陪臣の立場よりは、公爵家家臣で陪臣の立場の方がいいに決まっています。

 子孫の縁談先が天と地ほど変わってくるのです。


 しかもたちの悪いところは、この内容には、王家に対する忠誠心が含まれているという事です。

 今の王家が窮地なのは、王家の藩屛自認されている父上も理解されています。

 アイラが王太子妃から王妃になり、私が公爵妃となり、どちらかの子供がマクリントック公爵を継ぐとなれば、王家とマクリントック公爵は一心同体です。

 そのつながりの強さと戦力は、多くの有力貴族を掣肘することでしょう。


「アーサー王子が言いたいことは分かりました。

 父上に対するメッセージも理解しました。

 ですが私への配慮が足らなすぎるのではありませんか?

 私は妹のアイラと王太子に裏切られ、負担ばかりの領地しか与えられなかったのですよ?

 なんとか体裁が整うのは、精霊様のご加護があるからで、王家王国のお陰ではないのですよ?

 そんな私が王家王国の事を考えろと言われて、納得すると思われるのですか!」


 私の言葉にジョージが喜んでくれています。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る