第23話

「お前たちは外に出ていろ」


「承りました」


 いよいよ本題ですね。

 書面にかけるような、表に出せる条件など意味がありません。

 書面には絶対に残せない、後世には伝えられない密約。

 それがこれから話し合われるのです。

 いったいどのような条件を王家王国は考えているのでしょうか。


「ジョージは残します。

 ジョージ抜きの密談など認められません」


「分かっていますよ」


 私の出す条件など最初から想定済みのようです。

 夫候補であり、後見役でもあるジョージを抜きにして、王家王国との交渉など普通は不可能なのですから。

 もっとも、今の私にはアオとアカの後見がありますけどね。


「さて、これからの内容は表に出せるモノではありません。

 密約が成立してもしなくても、他言無用でお願いします」


「分かっています」

「理解しております」


 私とジョージが返事しましたが、アーサー王子は明らかにジョージを意識していますから、ジョージを独立した貴族に叙爵するのかもしれませんね。


「先ほど言った事と重複するかもしれないが、言い間違いや言い損ないがないように、改めて話させてもらうよ。

 そのうえで、表の書面と相反する内容があるのなら、表の内容を改める。

 王家王国が慌ててまとめた内容なので、齟齬があるかもしれないんだよ。

 まあ、ぶっちゃけ、オリビア嬢とジョージの仲が進展しないうちに、話を決めなければいけなかったのでね」


 確かにその通りですが、それだけではないでしょう。

 私が亜竜種を狩れることが伝わって、どのように対応するか検討を始めていたところに、この領地が精霊様の力で一変したことを知り、内容の検討を後回しにして、慌ててきたのでしょう。


「率直に言おう。

 私との子供は予備も含めて二人でいい。

 女の子ばかりでも構わない。

 男系でなくても構わない。

 マクリントック公爵家から婿をとって、女系で血をつないでくれて構わない。

 二人の子供を産んでくれた後は、好きな男と暮らしてくれていい。

 好きな男との間に子供をもうけてくれて構わない。

 その子供たちにも従属爵位を与えよう。

 ただし領地は与えられないから、この領地を分封してもらう。

 それと、まあ、これは私の個人的なお願いなのだが、私にも好きな女との間に子供をもうける事を認めて欲しい。

 その子に領地を分封することもだ。

 それに必要な従属爵位は、男爵位でよければ何十でももらえることになっている」


 思い切った決断をしましたね。

 男系を否定するなんて、貴族としてはよほどの決意です。

 しかも愛人の子を認め、爵位まで与えるなんて前代未聞です。

 表の契約書に書けないのも当然です。

 アーサー王子にとっても苦しい政略結婚ですからね。

 王子にだって婚約者もいれば愛する人もいたでしょうから。

 これほどの条件を断るのは難しいでしょう。

 ジョージも苦悶の表情を浮かべています。

 


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