第20話

「第十徒士団、第一徒士団と交代に出陣します」


「了解した。

 盗賊の侵入を排除してくれ。

 中には盗賊に偽装した斥候もいるだろう。

 そんな者は問答無用で殺して構わん。

 いっさい躊躇するな!」


「はい!

 お嬢様の名誉を穢さないように、騎士団長の命に従います!」


 領界を警備防衛してくれる徒士団が出陣します。

 私の領地には急ぎ護らなければいけないモノができたのです。

 全てはベヒモス様の恩寵です。

 荒れ果てた元耕作地だけでなく、山々にまで果樹が現れたのです。

 この国では高価な珍しい果樹を含め、四季折々に実をつける果樹です。


 いえ、それだけではありません。

 果樹のない元耕作地には、まばらではありますが、穀物が実ったのです。

 人が耕作するように密集してはいませんが、十分食用になる穀物が実ったのです。

 その果樹に実る果実や穀物を食べようと、周辺から無数の草食獣が集まりました。

 集まった草食獣を餌にする肉食獣も集まってきました。

 特に集まりが早かったのは、大小の鳥達でした。


 獣たちだけなら警備防衛を急ぐ必要はありませんでした。

 ですがそれだけではすみませんでした。

 密猟者が張り込んだのです。

 最初は高価な獣を追いかけて近隣の猟師が入り込んだのですが、私の領地はベヒモス様の加護を受けた豊な森があります。

 高価な薬草も群生しています。

 近隣の猟師は直ぐに密猟者となりました。


 しかも彼らはとんでもない噂を広めてしまいました。

 その原因は私にもあるのですが、私の責任ではありません。

 恐れ多い事ですが、ベヒモス様のせいなのです。

 私が精霊に愛されている事はすでに国中に広まっています。

 その私の領地なら、エリクサーの実があるに違いないという、根も葉もない噂が瞬く間に広まってしまったのです!


 万病に効くという伝説のエリクサー。

 最高の治癒術師でも治せない死病でも完治させるという伝説のエリクサー。

 永遠の命を獲得できるという伝説のエリクサー。

 そんなモノがあるという噂が広まったのです。

 手に入れようと領地に侵入する者が現れて当然です!


 本当にエリクサーがあるのか?

 ベヒモス様に聞いたりはしません。

 必要ならベヒモス様から教えてくださります。

 そんなモノは人には過ぎたモノです。


 ですが、それとは別に、どうしてもやらねばならないことがります。

 領地に潜入する者を撃退しなければいいけないのです。

 自分の領地に、他の貴族や他領の民が好き勝手に入り込む。

 それを見逃しては領主失格です!

 だから急いで領界を徒士団に護ってもらったのです。


 ですが中には犯罪ではなく正攻法で攻めてくるものもいるのです。

 ジョージを激怒させる正攻法を使ってくるモノです。


「お嬢様。

 第二王子のアーサー様が面会を求めて先触れを使わされました」


 ジョージが内心激怒しています。

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