第19話

「全員城の点検を行え!

 お嬢様が精霊ベヒモス様から賜られた聖なる城だ。

 決して間違いなどないと思うが、偉大な精霊様と人間では感覚が違うかもしれん。

 人間にとって使い勝手がいいか悪いか、我らの眼で確認するのだ」


「「「「「おう!」」」」」


 ジョージには微塵の迷いもありません。

 私の言葉は頭から信じてくれています。

 少々恥ずかしいくらいの傾倒ぶりです。

 ライバルとなる独身騎士たちに対して、私が好きだと大いにアピールしています。

 照れくさいと同時にうれしくもあります。


 今回の新領地への移動も、一切反対しませんでした。

 しかし自分がついてくることは絶対に譲りませんでした。

 本当なら新たなマクリントック公爵家第二騎士団騎士団長との引継ぎがあります。

 まだ予定人員の面接が終わっていないので、飛び地の軍城に残って入団希望者の面接をしなければいけません。

 それを全て放り出して私と一緒に移動したのです。


 ですがこの件に関しては、私も偉そうなことは言えません。

 私の私設騎士団と私設徒士団なのです。

 本来なら私が面接しなければいけないのです。

 ですが、そうはいかない訳ができたのです。

 ベヒモス様が私のための城を築城してくださったのです。

 放置しておくことなどできません!


 王太子の手の者や盗賊団に占拠されることを心配したわけではありません。

 ベヒモス様の眼を盗んで城の占拠などできるはずがないのです。

 そんな事をすれば、ベヒモス様配下の精霊や聖獣に殺されるだけです。

 私が大切にしたかったのは真心なのです。

 ベヒモス様の真心には、私も真心で応えなければなりません。

 他の者に任せられる仕事を優先して、ベヒモス様が私のために築城してくださった城を放置しておくなんて、絶対にできないのです。


「凄い!

 凄すぎます!

 鋼鉄の鶴嘴で叩いても傷ひとつつきません!」


「この巨大な城門は一枚岩でできています!

 しかも片開門が重なるように二枚もついています!

 これならどれほどの大軍が攻め込んできても撃退できます!」

 

 元冒険者の徒士の者たちが、私たちが安全に入城できるか確認してくれています。

 本当は確認など必要ないのですが、みなが私やジョージのように、ベヒモス様の事を完全に信用していないのです。

 忸怩たる思いはありますが、実戦経験を重ねた元冒険者ほど慎重です。

 命懸けで獲得した彼らの経験を否定するわけにはいきません。


「うわぁ!

 トイレにスライムがいる!

 スライムを食べる鶏や猪までいるぞ?

 まさか? 

 排泄物で鶏や猪を飼うのか?!」


 画期的なシステムです!

 今までのようにオマルに排泄して、下働きに捨ててもらう必要がなくなります!


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