第5話
「義を見てせざるは勇無きなり!
トーマス騎士家次男イーライ。
義によって助太刀致す!」
助けが現れました!
信じられません!
オリバー国王に逆らって私を助けてくれる人などいないと思っていました。
ありがたいことです。
「油断されないでください、御嬢様。
国王の小汚い罠かもしれません。
攻撃が失敗すると判断して、刺客の一人が味方の振りをして同行しようとしているのかもしれません」
エスメが反撃を止めて諫言してくれます。
確かにエスメの言う通りです。
国王に逆らえば、自分一人が殺されるだけでは済まないのです。
父母兄弟は当然殺されますし、俗に言う九族皆殺し・族誅・族滅のような、一族血族が全員殺されてしまうのです。
こんな状態で国王に逆らって、私を助けてくれる人がいるとは思えません。
エスメとアバとテディは特別なのです。
「このまま逃げるべきですか?」
「母上、助太刀の騎士様は、躊躇なく刺客を殺しています。
一切の手加減をしていません。
完全に否定しない方がいいのではありませんか?
四人だけで軍隊の駐屯する国境を突破するのは難しいと思われます」
アバがエスメに自分の意見を言っています。
母娘が信頼しあっている姿は美しいですね。
少々寂しく哀しい想いもありますが、母上がなくなった事実は変えられませんね。
「ここまで表立って刺客を動かしたのです。
国境の軍隊は全力で襲い掛かってくると覚悟した方がいいと思われます。
一人でも戦力は多い方がいいです。
国王が送り込んだ小汚い刺客なら、私が差し違えてでも殺します!」
外にいるテディがアバの意見に賛同しています。
私の方を見たエスメが一瞬迷った表情を見せ、直ぐに決断した表情になりました。
「刺客は任務達成のためなら平気で仲間も殺します。
他の刺客を躊躇なく殺したからといって、油断するわけにはいきません。
ですが国境を突破するのに戦力が必要なのも事実です。
馬車を止めて逆撃を行います。
イーライと名乗る騎士はテディが警戒してください。
警戒しつつ、殺した刺客が持っている魔道具を全部回収してください。
乗っていた馬も集めて、馬車の後ろにつないでください。
私は御嬢様の側を離れません。
アバはいつでも馬車を駆けさせる準備をしていてください」
エスメは今度追撃があったら、鹵獲した刺客の馬を盾に使うつもりですね。
私を護るためなのでしょうが、可愛そうです。
ですが反対などできません。
追い込まれた時に馬の盾がないと、エスメは自分の命を盾にするでしょう。
鹵獲した刺客の魔道具に魔力が残っていればいいのですが……
「私はロッシュ王家に仕えるトーマス騎士家次男イーライ。
修行の旅の途中だ。
この国には縁も所縁もない。
安心して頼ってくれ」
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