第6話

「いやぁ、驚いたぞ!

 この国に入った途端雰囲気が一変するんだからな。

 何なんだこの国は?

 国境の警戒は厳重だし、民はコソコソとしているし、騎士や徒士は横柄だし。

 まあどこの国の騎士も徒士も多少は横柄なものだが、この国は横柄すぎる」


 驚きました!

 近づいてくるなりペラペラとよくしゃべります。

 今も休むことなく話しています。

 エスメは適当に話を合わせていますが、本気では聞いていません。

 イーライと名乗った騎士はエスメの態度など気にしていないのか、ずっと話していますが、全然見た目にあっていません。


 警戒のためにテディはイーライの側を離れずにいますが、身長が百九十センチのテディより十センチは身長が高いです。

 何より違うのが、肉付きです。

 テディも鍛え上げた肉体を持っていますから、結構筋肉で覆われたガッチリした体格なのですが、イーライとは比較にならないのです。

 板金鎧を装備されていますので、その大きさから想像するしかないのですが、テディが板金鎧を装備した状態に匹敵する筋肉が覆われているように思われます。

 二メートルの高身長でなければドワーフと勘違いしそうな体型なのです。

 いえ、もしかしたら巨人族の血が流れているのかもしれません。


「騎士様は巨人族の血が流れておられるのですか?」


「うん?

 ああ、ワッハハハハ!

 この体格の事か?

 いやぁ、人間離れした体格であろう?

 だが違うぞ。

 分かっている範囲の祖先に巨人族はいない」


 本当におしゃべりな方です。

 多少失礼な質問にも笑って答えてくれます。

 でもその笑顔も、顔一杯の髭で独特の笑顔になっています。

 見かけによらずマメなのでしょうか?

 フルフェイス髭なのですが、汚らしく見えません。


「イーライ様。

 正直に申し上げますが、御嬢様はこの国の王に狙われています。

 御助力はうれしいのですが、そうなると国王に睨まれる事になります。

 そのお覚悟がおありですか?」


 エスメが率直に全てを話します。

 イーライ殿を味方にするかどうか試しているのでしょうか?

 それとも最初から味方にするつもりが無いのでしょうか?

 私の正直な気持ちは、味方に加えて欲しいです。

 直観でしかありませんが、いい人だと思います。

 あの笑顔には惹かれるモノがあり、好ましく思っています。


「なるほど、それで分かった。

 この国の王は随分と悪辣なようだな。

 この御嬢様がいい人間なのは一目で分かった。

 このような御嬢様を追放し、民を絶望させるのだ。

 暴君以外の何物でもあるまい。

 俺も騎士を名乗っておる。

 一度助太刀すると口にしたのだ。

 相手が王であろうと国であろうと、最後まで戦うぞ」

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