第4話

 魔力がガリガリと削られます!

 刺客が雨霰と強力な魔法攻撃を仕掛けてきます。

 誰かに見られる前に私を殺してしまいたいのでしょう。

 ですが下手な攻撃です。

 私の魔法防御は物理攻撃と魔法攻撃の違いが分かりません。

 威力の弱い弓の攻撃であっても、魔力を使って防御します。

 最初は弓を射かけて私の魔力を減らし、最後に強力な魔法攻撃を放つ方が効率的なのでが、最初から強力な魔法攻撃を繰り返しています。

 私が魔法の特性を秘匿しておいた効果かもしれませんね。


「御嬢様、反撃します」


 エスメが馬車から身を乗り出して魔法攻撃を始めました。

 ありふれた火魔法ですが、威力があります。

 私の乳母に選ばれたのも、同時期にアバを産んだ偶然からではありません。

 忠誠心があるのは当然ですが、強力な攻撃魔法と防御魔法が使えるから選ばれたのです。


 エスメの事ですから、刺客本人を狙うわけではありません。

 刺客を狙っても、防御魔法で防がれる可能性もあれば、魔法防御を施した魔道具を装備していたり、装飾品を身につけていたりします。

 こういう時は乗っている馬を狙うのです。

 魔道具はとても貴重なモノですから、馬にまで装備させられる者は極少数です。


「御嬢様、苦しいでしょうが踏ん張ってください。

 刺客は馬にまで防御魔法の魔道具を装備させています。

 投石と弓に切り替えます」


 敵はこの国一番の権力者、国王です。

 侯爵家令嬢が考える常識では当てはまりませんね。

 馬にまで防御の魔道具を装備させているなら、武器の魔道具も刺客に持たせているはずです。


 エスメもそれを危惧したのでしょう。

 持久戦の覚悟をするように言葉をかけてくれます。

 私の魔力がもつか、刺客が与えられた魔道具の魔力と刺客本人の魔力が上回るか?

 残念ながら圧倒的に不利ですね。

 こんなに早くに切り札を使わなければいけないのでしょうか?


「御嬢様。

 前方に回り込む刺客はおりません。

 私も後方攻撃に加えてください」


 ハリーが作戦変更を献策してきました。

 確かにその方がいいかもしれません。

 伏兵がいないのなら、追撃を食い止める方が大切です。

 前方に伏兵が見えてからでも、ハリーは反撃を間に合わせてくれるでしょう。


「そうしてください、ハリー」


 見る間に私が展開している魔法防御を襲う攻撃が減りました。

 ハリーが正確に刺客に攻撃を命中させてくれているのでしょう。

 私は馬車の中にいますから、自分の目で確かめる事はできませんが、状況を想像することは簡単です。


 ここは切り札の一枚を使うべきでしょうか?

 反撃して一気に刺客を壊滅させるべきでしょうか?


「刺客が吹き飛びました!

 騎士です!

 騎士が助太刀してくれるにようです!」

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