第10話

「何の心配もありません。

 今城には起きている者は一人もいません。

 全員眠らせました。

 イザベラ嬢が望まれるのなら、チャールズとブリーレとミアを眠らせたまま殺す事もできますし、起こして恐怖を与えながら殺す事もできます。

 全てはお望みのままですよ」


 私は真剣に考えました。

 よく自分の望みを見つめ直しました。

 後悔だけはしないように、本気で考えました。

 ルーカス様という絶対の後見人がいてくれる事が、私を冷静にさせてくれました。

 自分の本当の気持ちに気が付けたのは、その御陰だと思います。


「眠ったままの状態で殺します。

 別に苦しませたい訳ではありません。

 もちろん恨みが無い訳ではありません。

 でも本当に大切にしたいのは恨みを晴らす事ではなく、この国を正す事です。

 残虐な殺し方をしては、それを損なってしまいます」


「だったら今殺すのは問題ですね。

 この国の全貴族士族に、イザベラ嬢が正当正統に女王に戴冠するのを示さないといけませんし、私の後見がある事を知らせないといけません。

 それと、イザベラ嬢を裏切ったブレットソー公爵ダニエルや、直臣騎士や徒士も処刑しておくべきでしょう」


 私はルーカス様の献策を全て採用しました。

 強力な眠りの魔法の御陰で、何の不安も危険もなく処分する者を確保できました。

 その手伝いとして、ルーカス様は鉄や石、土や材木から創り出した騎士人形や徒士人形を貸し与えてくれました。


 人形達は全員全身式の板金鎧を装備し、剣を佩き槍を持っています。

 どこからみても人間が装備をつけ武器を持っているように見えます。

 しかもその人形達の胸には、ウィロウビー皇国正規軍の紋章が刻まれてるのです。

 これを見れば、私にウィロウビー皇国の後援が有るように見えます。


 その御陰でしょうか。

 誰一人逆らう者がいません。

 全ての貴族士族が絶対服従状態です。

 それも当然かもしれません。

 私が正当正統な後継者であった事は、全貴族士族が知っていたのです。


「私は国王陛下と王妃殿下の命に従っただけです!」

「そうです、私達は王命に従っただけです!」

「私達には王命に逆らう事などできないのです!」


 私を殺そうとしたミアの側近貴族士族がわめいています。

 聞いていて正直哀しく情けなくなります。

 自分のやった事の責任は、自分で取らねばなりません。

 それを言い訳をして逃れようとするなんて、卑怯すぎます。

 私の想いと同じだったのでしょう、ルーカス様が視線一つで従士人形に命令を下され、喚きたてる愚か者共の首を刎ねさせました。


「よく聞け!

 ウィロウビー皇国は不当不正な王位継承は認めないし、暗愚な王も許さない。

 チャールズとブリーレとミアは首を刎ねて殺す。

 王位は第一王女のイザベラ嬢に継いでいただく。

 後見は私が行う。

 文句のあるモノは出てこい。

 正々堂々剣で応じてやる!」


 誰も出てきませんでした。

 私は戴冠し、女王となりました。

 

 

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