第11話
「イザベラ陛下、申し訳ないが一緒にウィロウビー皇国に来てもらえないだろうか」
「どうかなされたのですか、ルーカス様。
そのように気を使われなくても、私達は夫婦ではありませんか。
そもそもルーカス様が助けてくださらなかったら、私は魔竜境で死んでいました。
女王に戴冠することもできませんでした。
公式行事の時はともかく、二人の時はイザベラと呼び捨てください」
「ありがとうイザベラ。
だったら僕の事もルーカスと呼び捨てにして欲しいな」
「はい、ルーカス。
私の愛しい人。
それで何が起こったのですか」
「実は国の父が隠居すると言い出してね。
直ぐに帰ってきて欲しいと母上もセバスチャンもうるさいのさ。
これはこのまま家を捨ててこの国に骨を埋めても大丈夫だと思うのだけれど、二人ともそれでは不幸な者が生まれてしまうと言い張るのだよ」
「そうですね。
ルーカスに家を捨てさせるくらいなら、私が家を捨てるべきでしょうね。
ルーカスがただの騎士ではないと分かっています。
聖騎士だというだけでは説明できない気品をお持ちですもの。
ルーカスが家を捨ててしまうと、家督争いで家臣領民が不幸になるのでしょ。
私は何も言われても驚きませんから、本当の事を教えてください」
「そうだね。
イザベラなら何を聞いても大丈夫だろうね。
それで態度を変えるるような人間性ではないものね。
ただ分かって欲しいのだけれど、家に戻ればイザベラだけの夫ではいられない。
家の跡継ぎを設けるためだったり、家同士の絆を結び戦争を未然に防ぐためだったりといった理由で、第二婦人や第三婦人を置かなければいけなくなる。
それでもいいのかい」
「父も母に隠れて愛人を設けていました。
幼い頃の私はそれを不潔だと思っていましたが、今なら多少は理解できます。
よろこんでというわけではありませんが、ルーカスの家を継ぐ子供も必要だと分かっています」
「そう言ってくれると助かるよ。
イザベラを第一婦人にする条件は誰が何といっても譲らないから、それだけは約束するから、許して欲しい」
「ええ、分かっています。
ではそろそろ教えてくださいますか。
ルーカス様はウィロウビー皇国の何という貴族の御曹司なのですか」
「ああ、それがね、うんとね、皇族なんだぞ。
そのぉ、まあ、なんだ。
聖騎士の肩書を利用して好き勝手していたから、信じてもらえないかもしれないんだけど、第一皇子で皇太子なんだ。
弟に皇位を譲ろうかとも思ったんだけど、そんな事をすると内乱が起こると叱られてしまってね。
イザベラには皇太子妃として俺を助けてもらいたいのだよ」
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