第4話

 死力を振り絞って、魔力の続く限りコボルトを斃します。

 最後の一弾だけは、自害用に魔力を残しますが、気絶する一歩手前までは、戦って戦って戦い抜きます。

 でも、そろそろ限界です。

 諦めたくないですが、恥辱を受けないように死を選ぶ時を見極めないと!


「諦めるな!

 私が助ける!」


 白馬の王子様?

 いえ、金色の王子様です。

 黄金色に輝くプレートアーマーを装備されています。

 馬まで金色に輝いています。

 そんな毛並みの馬は初めてみます。


 私が驚きのあまり自害するのさえ忘れている間に、金色の騎士様はまるで無人の野を行くように、コボルトを蹴散らしてこられます。

 さっきまでは必死で気が付きませんでしたが、百を超えるコボルトがいます。

 私が必死の防戦をしている間に、新たな群れがやってきたのでしょう。

 魔竜境は私一人で生き残れるような場所ではなかったのです。


「さぁ、こちらへ、姫」


「え?

 何故私が王女だと知っているのですか?」


 先程から驚かされてばかりです!

 危急の時に救いに現れて下さったことも驚愕ですが、その強さも御姿も私の常識からは著しく離れています。

 その上に初見の人間の身分を当てるなんて、神様のお使いなのでしょうか?

 今の私はとても王女には見えない、麻で出来た粗末な貫頭衣を着ているのです。


「本当の王女殿下でしたか。

 私には人の魂が見えるのです。

 貴女の魂はとても美しかったので、姫と呼ばせていただいただけですよ」


 また驚かされました。

 魂が見えるなんて聞いた事がありません。

 普通なら騙そうとしていると疑うところですが、金色の騎士様に限れば、全く疑う気にはなりません。

 ですから、自然に手が伸ばされて、鞍の前に乗るように誘われても何の抵抗感もなく、素直に乗ることができました。


 私が心の中で色々と考えている間に、騎士様は次々とコボルトを斃されます。

 私を護るために、鞍の前に乗せて下さっているので、槍を自由に振り回す事はできないのですが、それでも右手だけで槍を持ち、次々とコボルトを刺殺されます。

 いつの間にか左手には長剣が握られ、近寄ろうとするコボルトを斬り斃されます。

 もっとも左から近づくコボルトはほとんどいません。


 私とプレートアーマーを装備する騎士様を乗せているので、とても重いはずなのですが、そんな重みなど感じないように、軽やかな動きで金色の馬が躍動します。

 押し寄せるコボルトの群れを右側だけに限定させるため、踊るように動くのです。

 それだけではなく、前脚や後脚でコボルトを蹴り斃しさえするのです。


「ウギャァゴギャァァァァァ!」


 もう少しで三百を超えるコボルトが全滅すると思われた時に、新たな叫び声が聞こえてきました!

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