第5話 持統女帝

 第41代 持統女帝は、里中満智子氏による漫画『天上の虹』の主人公として知られている。かの漫画は 1983年に連載を開始したが、近年(2015年)、長い期間を経て 遂に完結。

 里中氏は 漫画家であるとともに大学教授でもあられるが、この国の古代史に造詣が深く、他にも『長屋王残照記』や『女帝の手記-孝謙・称徳天皇物語』などの作品を残されていた。

 飛鳥から奈良時代にかけての時期は、特に女性の活躍や男女間の愛憎劇が目覚ましく、歴女と呼ばれる歴史愛好家の一部も この時代に関心を寄せているという。


 自らの事績である孫への皇位継承を神話「天孫降臨」に投影したと思しき持統女帝は、正史『日本書紀』編纂を命じた天武天皇(第40代)の皇后であり その次代の権力者だった。

 持統女帝は 第38代 天智天皇の次女むすめであり、壬申の乱で敗者となった大友皇子の姉であるが、乱の勝者である皇配おっと 天武天皇とは仲睦まじく、壬申の乱の勝利も彼女の貢献なくしてはあり得なかったかのように正史には記されていた。

 持統は 天武の崩御後(686年)、すぐに、彼と自分との間の子 草壁皇子の即位を狙い、その異母兄弟ライバル 大津皇子を謀殺しているが、はかなくも 草壁は天武の喪があける前に病没。3年の皇位の空白期間を経て(持統称制)、彼女は即位した(690年)。

 その後、天武天皇の長子である太政大臣 高市皇子の薨去(696年)を受けて 皇室会議を開き、自らの孫 珂瑠皇子へと譲位(697年)。彼女自身は、史上最初の太上天皇となった。

 そして、この持統から孫への譲位をもって、正史『日本書紀』は終わっている。

 なお、史上初の譲位は、第35代 皇極天皇によるものである。


天智 — 持統

  |  ‖— 草壁皇子 — 文武(珂瑠)

  | 天武 — 高市皇子

  |  ‖— 大津皇子

  |—大田皇女

  |

  ∟— 大友皇子(弘文)

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