第15話
僕は、不幸中の幸いだったんだ。
あのままだったらあいつらに騙されて、働かされていたかもしれない。あの三人は大丈夫だろうか。
助けた方がいいかな。でもなぁ。これもまた考え方によるだろうから。
今、どういう待遇なのか。
助けたとしても結局は、ハンターになるしかないだろうし。
とりあえずは、現状維持がいいかも。
あ……。
ふと顔を上げると、クーホン班長と目が合った。僕はまた考え込んでしまっていて、それをクーホン班長は観察していたようだ。
やっぱり、記憶喪失の少年として単純に信じているわけではなさそう。
でも仲間してくれた。かわいそうだからと入れたわけではないだろうけど、お陰で助かった。それに、僕を傷つけようとは思ってないみたい。
僕は、ニコッとほほ笑んだ。
とりあえずは、このまま記憶喪失の振りを続けよう。
「あのね、クーホン班長」
「なんだ?」
僕は、もじもじと縛ってある髪をいじりながら声をかけた。
「僕もこれ、欲しいな」
右手人差し指で、班長の左腕をつつく。魔道具のブレスレットのすぐ横。
クーホン班長は、一瞬うん? という顔つきになってつつかれた腕を見て、あぁっと頷いた。
「ブレスレットな。それはもう注文してあるぞ」
「え!?」
「魔道具は基本、そこら辺では売っていない。頼んで作ってもらうんだ。街の店で注文したから出来たら取りに行く。これは、出来次第だから楽しみにしていろ」
「ありがとう。あと変な事を聞くけど、クーホン班長っていくつですか? 僕は10歳」
「は? 84歳だ」
一瞬、素で驚いた顔つきを見せた後、がはははと笑って答えてくれた。
うん。獣人は長生きらしい。その血が混ざっているハーフも。という事は、ラチャさん達も見た目より年という事で。
「しかしなんで今更年齢なんて聞くんだ?」
「えーと、ふと見た目よりおじさんなのかなぁ。なんて思ったからつい」
半分は嘘じゃない。あと半分はちょっと確かめようと思っただけだ。まあ年齢なんて偽らないとは思うけどね。
悪いとは思ったけど、ステータス鑑定をこっそりさせてもらった。
ゲーム内でも、ステータス鑑定は許可なく出来ない。というか、相手が表示切替で見せるとかにしない限り、こうやってこっそりじゃないと見れない。
まあ見る意味はあまりないので、ステータス鑑定なんてする人はそうそういない。けど出来るから僕は、そのアイテムもオリジナルで作った。
もちろん許可なく見る鑑定方法だ。うん。褒められた行為ではないけどね。
僕は、プレイヤーから見えないシークレットアイテムを作り装備している。大抵は
鑑定は、自動では行われない。発動させるのには、合図が必要だ。
スキルとして覚えて発動させるなら『〇〇を鑑定』と言えばいい。マナを消費するから、この世界では魔法になるだろうけど。
そして、アイテムで鑑定する場合でも決まった動作が必要で、普通ならスキルと一緒でアイテムを所持した状態で、『〇〇を鑑定』と言う。でもそれだと、こっそりと鑑定は出来ない。
そこで考えたのが、行動のみの合図。僕自身の髪の毛を握り、対象に触れる事。
キャラクターは、普通髪は抜けたりしない。でも実は、材料として使用できるんだ。まあ使うのは、オリジナルアイテムを作る時のみなんだけどね。だから髪の毛を抜くと言う行為が出来る事自体を知らないと思う。
まあそれはいいとして、いやだからこそ合図に取り入れたんだ。
髪の毛は、根元からではく先っぽだけでもいい。なので、ゴムで縛ってある部分から下を抜き、対象に触れる事で「鑑定の条件として消費される」。手に持った髪の毛が消えれば、鑑定は発動した事になる。
行為に気づかれない限りは100%成功する。レジストするアイテムを所持していても、鑑定自体は行われ不明で表示されるように開発した。
まさか、ここでそれが役に立つなんて!
――――――――――――――――――――――――――――――――
ネーム:クーホン 年齢:84歳 LV:34 ジョブ:ハンター
HP:610/610
MP:0/0
STR:89
DEX:17
VIT:64【61+3】
AGI:9
INT:0
MND:0
LUK:5
スキル 力術:LV14 剣術:LV24 解体:LV5 見切:LV11
魔 法 ―
――――――――――――――――――――――――――――――――
やっぱりパラメータは存在していた。ただこの世界の人達が知らないだけだ。
それと、ゲームとは割り振り方も違う。
見せてくれた鑑定結果がいつのものかはわからないけど、剣術も解体もレベルが上がってないところを見ると、本当にモンスター退治してないんだな。
しかし、ハンターなのに随分と防御力の低い装備をしているけど、一般的なんだろうか。武器の方は、ゲームと違って手にしている時でないと、パラメータに加算されないようだ。
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