第14話

 クーホン班長は、手にしたハンター認定書をひっくり返す。そこには、スキルが書いてあった。


 「あ、スキルが……」


 やっぱり一つじゃなかった。


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  スキル 力術:12LV/剣術:24LV/解体:5LV/見切:9LV

  魔法 なし

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 「まあこんな感じで、複数のスキルを持っているのが一般的だ。俺の場合で言えば、剣術がモンスターに効くスキルだ。で人間相手というか、賊相手でも引けを取らなかったのは、力術があるからだ」


 僕はなるほどと頷く。

 剣術は攻撃系のスキル扱いだけど、力術は攻撃というよりは字の如く、力が強くなっていくスキルに違いない。それは、ある程度全般に発揮するスキルなんだ。

 それと、やっぱりレベルの概念はあった。

 まあ英雄召喚された三人のスキルにもレベルがあったけど、一般的にも表示されているもんなんだ。


 「お前もスキルを鑑定してもらった方がいいだろう」

 「えーと……」

 「俺の所にいるにしてもどこかに行くにしても、自分のスキルを知らないとどうにもならないだろう。体術が出来ると言ったところで、証明書として発行してもらった方がいい」

 「発行が可能なんだ」

 「あぁ。見るだけではなく発行してもらうと値は張るがな。一度発行してもらえば一生もんだしな」

 「それって、レベルが上がれば勝手に書き換えられるって事?」

 「うん? あぁ、違う違う。俺のは、班長になる為にレベル付き鑑定をしてもらったんだ。だからお前のは、スキル名だけ」

 「へえ」


 鑑定の仕方を変えられるのか。

 ゲーム内ではそういうのは必要ないから、鑑定の仕方に種類なんてない。


 「そうだ。一つ言っておく。期待させておいてすまないが、鑑定自体は来年な。ここの仕事が終わった後」

 「え……」


 別に鑑定をしてほしかったわけじゃないけど、そうなのね。でもそれなら、それまでにフェイクスキルを作って置くかな。このままだとレジストするだけだから、スキルなしになっちゃう。

 スキルって何個ぐらい持っているのが普通なんだろう。


 「あの……」

 「うん? なんだ?」


 今、僕の事、じーっと見ていなかった? もしかして観察されていた? 聞かない方がいいだろうか。でもそれでやらかした方が、変に思われるか。


 「スキルって普通は何個ぐらい持っているの?」

 「人によって違うが、2~4つぐらいが平均か」

 「人間と獣人では、スキルが違うみたいだけど」

 「そうだな。人間は生活スキルが一般的だ。調理スキル、耕作スキルなどな。あと調合とかも人間に多い。逆に戦闘系は少ないから、この国では俺たちの様なハーフでもハンターギルドに入っている事が条件で生活が許可されている」


 生活の許可? そっか。この国は人間の国なのか。


 「ハーフには、俺の様な剣術や刀術が多いな。ハチーユ達の様な戦闘術がないハーフは、逆にこの国で暮らすのは厳しいんだけどな」


 ハーフなんだから人間側のスキルだけっていう者もいるんだ。なんで大変なのにこの国で生活してるんだろう。他の国は、ハーフに厳しい国なんだろうか。


 「じゃなんでこの国で暮らしているって顔をしているな」

 「え……」

 「一度この国でハンターになると、他の国のハンターになれない。というのがこの国の規則なんだ。あ、お前は人間だから関係ない。ハンターギルドを辞めて、解体ギルドに入ったりできるからな」

 「はぁ」


 よくわかんないけど、ハチーユさん達はこの国でハンターになってしまったから仕方なくハンターを続けているわけね。しかも解体ができても、彼らは解体ギルド員にはなれないと。


 「どうだ。知りたい事は、知れたか?」

 「え? あ、はい」


 そういえば、ここら辺ってモンスターはでないんだっけ? 森の奥に行かなければと言っていたけど、街から見ればずっと森の中だけどなんで?

 こっち側って、僕が召喚された方角と街を挟んで反対側だよね。


 「あの、モンスターの出現場所って決まってるんですか?」

 「うーん、決まっているというか瘴気の量による」


 瘴気! そうだった。これはゲームにない設定だからちゃんと聞いておいた方がいいかも。


 「それって何?」

 「瘴気か? わかりやすく言うと、モンスターが生まれる場所だな。原理はわからないが、瘴気が集まる場所にモンスターが発生する。モンスターは、核となる魔石を持っていて瘴気がなくとも生命を維持している」

 「魔石……」


 それもゲームの設定にないな。ゲームに似た世界に召喚されたわけではなさそうだ。


 「魔石は知っているか? それは、魔道具の燃料となる物質だ」

 「え、魔道具?」

 「あぁ。ほら俺のこのブレスレッドもそうだ」

 「錬金術とかそういうの?」


 木の柵が錬金術師によって作られたと言っていた。この世界にクラフトという概念がなく、すべて錬金術と言うかもしれない。


 「あぁ。その単語は知っていたか」

 「えーと、ナッティーさんに聞きました。木の柵が結界になってるって」

 「そうだ。仕組みはわからんがな。魔石は、錬金術ギルドと魔法ギルドが欲しがるアイテムだ」


 うん? そういえば今気が付いたけど、魔法ギルドがモンスター退治をしているわけではないよね? 召喚しないといけないほど切羽詰まった感じもないよね?

 もしかして召喚したのって、世界を救ってほしいんじゃなくて、魔石がほしいだけだったりして!?

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