第3話

 うーん。一応武器をストレージから出しておくかな。

 僕専用の武器。攻防の軍手。見た目はただの白い軍手だけど、自身の創作術のレベルによって、攻撃と防御が可能。物理はもちろん、魔法も防げる優れもの。これの一番のメリットは、自身のマナを使わずに周りにあるマナを使用する点だ。

 もちろん、周りのマナが無くなれば自身のマナを使う事になるけど、ここら辺なら大丈夫そう。

 普通は、自然が多いところにマナはたくさんある事になっているけど、一応異世界って設定だから確かめた方がいいかな。


 マナ測定器っと。

 僕はストレージからマナ測定器を取り出した。

 これは見た目は手のひらサイズのガラス玉。無色透明だけどマナを吸い取り色が変化する。マナが濃いほど緑に染まっていく。

 心配いらなかったみたい。マナ測定器は、どんどん緑色になっていく。透けないぐらい濃くなったから問題なしと。

 ポイっと、ストレージにしまった。

 さてと行きますか。できれば夜になる前に着きたい。

 この世界にもモンスターが存在するようだし。できれば戦いたくない!


 僕はまた走り出した。

 本当は乗り物に乗りたいところだけど、それだけがなぜかストレージに入っていない。僕、走るの遅いんだけどなぁ。


 はぁはぁ。もうダメ……。召喚イベントはもうしないでほしいよ。

 僕は、両膝に手をつき深く呼吸を繰り返す。


 ガサガサガサ。

 へ? まさかモンスター?


 恐る恐る音のした茂みに振り返ると、小さな子犬だ。あれだ、フレンチブルドッグ。でもちょっと違うような……って、ちょっとじゃなかったぁ!!

 目! 目が一つだよ。つぶっていた目が開いて僕を見た。それは、大きく赤く光っていて、細められたと思ったらとびかかって来た!


 「うわぁ」


 咄嗟に両手を突き出す。

 何も考えてなかったけど、マナの波動が繰り出され犬の様なモノは、近くの木まで吹き飛んでいった。そっと様子を伺うが、動き出す様子はない。

 び、びびった。

 軍手が、ほのかに緑色に色づいている。

 やってしまった。きっと弱かったに違いない。なのに思いっきり放ってしまった。この軍手は、使用上限がある。マナに染まるといって、使えば使う程緑色に染まっていく。使い方によっては、一気に使えなくなる事もある。

 放置しておけば自然と抜けていくが、僕の創作術が高い為、使う時に威力を気を付けないと、あっという間に染まってしまう。

 ほのかに染まっただけでも、一時間は放置しないといけない。

 なので今、この攻防の軍手のマナを抜くアイテムを開発中だ。


 はあ。僕も普通の武器を扱えればいいんだけど、ジョブを選んだ時点でそのジョブが扱える武器しか使えなくなる。

 僕のジョブは、アルケフト。錬金術アルケミーとクラフトが出来るジョブ。

 凄く珍しいジョブ……いや、あまり選ばれないジョブかな。

 普通は、錬金術かクラフトのどちらかを覚えるだろうから。ちなみに錬金術は、ポーションなどの薬系アイテムを作るスキルで、クラフトは装備品から便利アイテムまで作れるスキル。

 一応、錬金術師アルケミ―とクラフト師も存在するが、サブキャラに多い。ジョブは、キャラにつき一つだけ。サブジョブはない。

 ジョブを選択しなくてもスキルを覚える事も可能だが、この場合も錬金術かクラフトのどちらかになる。

 その点、アルケフトは創作術というスキルを覚え、何でも作れちゃうのだ。


 このアルケフトになるのには、条件がある。

 一つは、メインキャラでないとなれない点だ。このため、なる人が少ない。サブキャラを作成する為には、メインキャラを50レベル以上にしてからでないと次のキャラを作れない事になっているからだ。

 アルケフトは隠れジョブで、隠れジョブはキャラメイキングの時にパラメータにポイントを振るのだが、それをどれかに全振りしないといけない。

 アルケフトは、運に振るとジョブ選択時に表示される。だけど、それが運の為に最初凄く苦労するのだ。

 振るのは9ポイントで、パラメータは初期値全て1なので、全部振ると10ポイントになる。そして、パラメータで一番高い数値が+10%となる。なので、運だけ11ポイントになる。これはジョブを選ぶまでだ。

 その後、キャラがLV30以上になるとジョブを選択できるようになる。ジョブを選択する時に、選択できるジョブが表示されるので後は選ぶだけだ。だけど、アルケフトを表示させる為には、運以外のパラメータは一桁でなければならない。

 レベルが上がるごとに5ポイントを好きなように振る事が出来るが、僕はジョブを選ぶまではひたすら運に振っていたよ。


 隠しジョブはそれに見合ったパラメータが+100%になる。なのでアルケフトは運が+100%になって、通常ジョブの場合はそれに見合ったパラメータが+50%になる。

 大体の人は、隠しジョブを選ぶならアルケフトではないジョブだろうけど、僕は出来るだけ戦闘をしたくなかったから選んだんだよね。それでも結局戦闘したけどさ。

 ジョブを選ぶまでは、条件付きの装備品でなければ装備が出来て、『運によって数値がプラスになる』のもあったので、それを使用していた。

 けどアルケフトは、自身アルケフト専用の装備を自分で作らないと、何も装備できないというジョブだったんだ。アルケフトの武器は売ってなかった。アイテムを作るジョブだかららしいけど。

 だからジョブを取得してからも苦労させられた。僕は、初期の頃からやっていてギルドにも恵まれていた為、50LVになってもメインでつづけていたんだ。

 たいていの人は、50LVになったらサブを作り、そっちをメインにしていた。

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