メモ4

胆鼠海静

直交書籍、という形態が人口に膾炙したのは、<嵐>ののち、全生物が知性化された後に位置づけられることに異論はないだろう。書物の保存技術の発展によって、紙虫は絶滅寸前だったので、噛み抜いていった文字によって、彼らが、立てた本に直交する形で文筆活動を行っていることに人類が気づく可能性は極めて少なかった。さらに彼らのものす文献は、彼らが食むことによって失われた文字によって成り立っているため、一つの直交書籍を解読するためには、その書籍が生まれる元となった本をもう一つ用意する必要があり、発見のタイミングはさらに遅れることになった。現在でも対応本のない直交書籍は数多く、代替的な解読手法の考案が望まれる。

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メモ4 胆鼠海静 @nikyu-nikyu

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