30.6

 また忙しい時期がやってくる。出来る限り取引相手の都合に合わせたいと思ってはいるが、未だ全てに対応し切るのは難しい。

 それでも、診療所側が気を遣って発注時期をずらしてくれることもあって、この仕事は俺達の働きだけで成り立っているのではないと強く実感する。その殆どが父の代から取引のある相手だが、今日入っていた発注の中に俺が営業で新規に取引を始めた診療所の名前があり、嬉しい気持ちでいっぱいになった。


 俺の気持ちを察してくれたのか、今日のルッツはいつも以上に笑ってくれた。頬を擽られるのが好きなようで、顔をくしゃくしゃにして笑う。ルッツが暴れる力も、手で握る力も強くなった。

 ヤンは嬉しそうに俺とルッツを眺めて、明日から頑張れるようにとハーブティーを淹れてくれた。ヤンの優しさ、ルッツの成長が、俺の日々の糧だ。

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