20.4

 頭痛はだいぶ治まった。しかし、こういう時こそ油断してはいけないのは、自分でもよく分かっている。


 テオドールとヘレナの祝いは、三日後に決めた。それまでに俺は出来るだけ仕事を片付けてテオドールの予定が空くようにする。ヤンとメイド達、料理人達にはパーティーの準備を、従僕達には必要な買い出しを頼んだ。勿論、二人には悟られないようにと皆に伝えてある。驚いた顔を想像すると今から楽しみになってしまう。俺もやはり、父の子なのだろう。

 テオドールもヘレナも、他の使用人達から頼りにされる存在だ。皆があいつらを慕っている。昔から二人をよく知る俺も、その様子を見て嬉しくなる。特に、テオドールはこの屋敷にしょっちゅう出入りしていたのと、ヴァルターの仕事中は遊び相手をしていたのもあって、今のテオドールの姿は誇らしくもある。

 ヤンはヘレナにどんな思いを抱いているのだろう。そういえば、ヤンの使用人時代の話を本人から聞いたことはあまりなかったから、今度時間を取って聞いてみるのも良いかもしれない。興味はある。メイドになったばかりの当時は、ヤンも仕事を覚えるのに必死だっただろうからとあまり話をしていなかった。

 あの頃から、ヤンの表情が生き生きしていたと思う。ヤンをうちに招いて、本当に良かった。

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