24.3
今までに何度もしてきたこととはいえ、やはり商談は慣れないものだ。俺がやらねばならないと分かってはいるが、不安と緊張が大きくなるのも事実だ。
先日父が来た時に尋ねてみたが、最初の頃は緊張よりも絶対に家を大きくするという必死さが勝り、細かくは覚えていないらしかった。俺が生まれた頃から肩に力が入りだし、失敗してはいけないという重圧に押し潰されそうになったこともあったようだ。そんな時に支えてくれたのが母だとも。俺にとって大きな支えはヤンの存在だから、その気持ちは充分に理解できた。
今日の訪問先は父の代からの取引があった家だからまだ良かったが、新規の取引先をとなると難しい。うちで取り扱う商品の良さは知っているが、それを伝え切れているだろうか。俺がしっかりしないと、ホフマン家に商品を届けてくれる家や農園に申し訳ない。大切な商品を俺達に預けてくれたのだから、俺だってその信頼に応えられるだけの働きをしなければならない。そして、俺を支えてくれる、信じてついてきてくれる使用人達にも、この家で働いて良かったと思ってもらえるように。
俺は未熟だ。周りの力を借りなければ努力すらままならない。だからこそ誰かが困った時には協力したいと思うし、人間関係というのはそうして良くなっていくものなのだろう。
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