23.3

 ヤンから手紙の返事が来た。一昨日の日記が返事代わりだと思っていたから驚いたが、思った以上に嬉しいものだ。

 字を書くのが得意ではないと言っていたが、俺にとってはどんな名文にも勝る素晴らしいものだ。大切に保管しておきたい気持ちと、繰り返し読みたい気持ちとがせめぎ合っている。簡単に複写を作れたら良いのだが。

 ヤンの何気ない行動、言葉が俺を元気付けてくれる。励ましてくれる。人に対してこんな気持ちを抱く日が来るとは思っていなかったが、ヤンのいない人生など考えられないのは俺も同じだ。


 そんなヤンは、今日もそわそわしていた。きっと手紙をテオドールに預けたのが昨日だろうから、今日中に届くと思って落ち着かなかったのだろう。親へのプレゼントを内緒で買った子供のようで、可愛らしい。

 ヤンは今年で32になるが、年齢よりもずっと幼く見えることがある。きっと今までが大人びていて、子供らしさを捨てなければ生きて来られなかったこともあるのだと思う。反面、封じた子供らしさが今明かされていると思うと、愛おしさと喜びが込み上げる。ヤンにはただ、自分らしく好きなように生きて欲しい。俺の力で少しでも助けになるのなら、喜んで全力を尽くそう。


 ヤンからの手紙には封蝋まで押されていた。恐らくヤンはやり方を知らないだろうから、きっとテオドールがやったんだろう。やはりあいつは爺さんの孫だ。

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