18.3
テオドールに供を頼んで、ヤンと町へ出た。必要な買い物はヘレナに任せてあるから、目的も特に作らず散歩をしながら色んな店を覗いてみたり、昼食も外で済ませた。たまには町での食事もいいものだ。
せっかく町へ出るのだからと軽装で向かったが、もし俺が貴族でなかったらああして歩くのが日常だったのだろうかと思う。今の俺の立場を嫌だと感じたことは一度もないが、違う視点からものを見るのは仕事においても普段の生活においても役に立つ筈だ。俺の仕事は地位に関わらず、人に寄り添うものなのだから。
ヤンと二人で旅行をした時の、屋台の男が言っていたことをふと思い出した。彼は、皆が幸せだから自分もやりがいを持てるのだと、嬉しそうに笑って言った。また行きたいと思う。子供にも、美しく澄んだ海と、賑やかでいて思い遣りに溢れるあの町を見せてやりたい。
子供といえば、ヤンは最近子供のいる家政婦に色々と話を聞いているようだ。お互いに初めてのことで不安はあるが、ヤンは自分にできることをと努力している。俺も、置いて行かれてばかりではいけないと強く思う。明日にでも少し時間を作って、俺も話を聞いてみよう。俺は彼女達の雇用主にあたるが、それでも親としては彼女達の方がずっと先輩だ。何より、立場を気にせず教えて合い支え合う関係は、少なくとも俺にとって居心地の良いものであるからだ。
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